50.退院当日

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“ぱちっ”

めざましの音に、
まるで今まで起きていたかのようなスピード感で目覚めたわたし。

“ ぽちっ ”

すぐさま、めざましを止めました。
とても浅い眠りだったようです。

入院11日目。
とうとう退院の日がやってきました。

家族に“おはよう”とメッセージを送り、
いつものように歯を磨いて、
体重を測りに行きました。

この景色も、いよいよ今日で最後なんだな。

しみじみ思いながら携帯を開けば、「着いたよ」の文字。
時計をみると、まだ6時20分です。

もう!?

早めに駐車場に着いて、
仮眠して待ってくれていたようです。

急いでエレベーターホールに向かうと、
そこには母と姉の姿がありました。

ひとりで病院で過ごす時間はながく感じて、
家族の姿を見たときはすごく安心しました。

朝の回診が終わって、
最後の朝ごはんを口にしたあと、
身支度を整えます。

退院の日には明るい気持ちで病院を出たい。
そう思って持ってきていたのは、
ふなっしーが描かれたお気に入りの真っ白なTシャツでした。

病室のカーテンを閉めて、
意気揚々と着替えようとしたそのとき。

「…っていうかこれ、着れないんじゃない?」

その言葉に、家族みんな固まりました。

リンパを切ってからリハビリを続けていたものの、
わたしの腕はまだあがりきっていなかったのです。
頭を通す想像すらできませんでした。

家族に手伝ってもらい、奮闘すること約5分。
汗だくになりながら、Tシャツを着ました。

帰ってからTシャツを脱ぐことは、
あえて考えないことにしました。

荷物をすべてしまって、空っぽになった部屋。

看護師さんに忘れ物がないか最終確認をしてもらい、
病室をあとにしました。


今まではそばにいてくれた先生や看護師さん。
長く過ごしていた病院を去るときには、
急にひとりで歩きださなくてはいけなくなったような気持ちに襲われました。

当たり前のことだけれど、
自分のことは自分でやっていかなければならない。
これからはもっとちゃんと、
傷と向き合わなければいけない。
そう感じました。

「何かあればいつでも来てください」
と看護師さんは言ってくれていたけれど、
気持ちの隅にある不安はなかなか消えませんでした。
リハビリを続けてもまだあがらない腕も、
このままあがらなかったらどうしようと不安になりました。

それでもやっぱり、
ひさしぶりに帰った我が家は、
とても懐かしくて、安心感がありました。

その日の夜は、家族が退院をケーキでお祝いしてくれました。

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2017/06/25 23:55

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