ハイジの記録 vol.2 意識の変化

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母の手術の日、入院の日まであと少し。どう足掻いても母は入院するし、胸も摘出するのに、何故か悪足掻きしたくて仕方無かった。

放課後、塾に行った。掲示板には「休講」の二文字。
マジか。それなら、と劇団の稽古に行った。

稽古もその日はいつもより早く終わってしまい、劇団の人に博多埠頭まで連れて行ってもらった。
めちゃくちゃ寒い夜の海辺、灯りのない真っ暗な砂浜をローファーで歩く。
風が強くて、少しでも離れたら声が聞こえなかった。

「あのさー」

徐に、何を言い出すとも決めずに口を開いてしまった。

「なーにー?」

普通に聞き返された。私は何を言いたかったんだろう。言葉を考えるよりも先に、口が動いていた。

「神様っていないよねー、いたらみんな幸せだもんねー」

涙が出てきた。ここに来て、まだ言うのか私。
真っ暗で先の見えない海が、とても綺麗だった。強い風、冷たい空気、全部が襲ってくるような感覚。

「とりあえず、帰ろっかー」

そう言われて、車に乗り込む。あぁ、どう頑張っても、あの家に帰るんだなぁ、母が元気だった頃の家には、帰れないんだなぁ。

暗い海を見ていたら、何だかもう『諦める』という気持ちが、ふと私を静かにさせた。

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2017/10/16 09:16

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