≪医師監修≫人工授精(AIH)とは?成功率、リスク、治療の流れ、費用について

更新日:2017/03/27

人工授精は、質の良い精子を子宮内に直接注入することで妊娠の確率を高める方法です。ここでは、人工授精の成功率やリスク、治療の流れ、精子の選別方法、費用などについて解説します。


記事監修医師宋美玄先生  

【 記事監修 】
 産婦人科医・医学博士
 宋美玄 先生


●人工授精とは
●治療の流れとスケジュール
●精子の選別方法
●かかる費用
●副作用

●人工授精と体外受精の違い
●まとめ

人工授精(AIH)とは

人工授精と自然妊娠

人工授精は、精液から元気な精子を採取し、直接子宮内に注入することで、卵子と精子が出会う確率を高める方法です。「人工」という言葉が用いられていますが、自然妊娠との違いは、精子が「膣」を通るか通らないかだけです。


人工授精は「AIH」とも呼ばれますが、これは「Artificial Insemination by Husband(配偶者間人工授精)」の略称です。


対象となる人

女性側に不妊の原因があるケースでは、子宮頸管粘液が少なく子宮まで精子がたどり着くのが難しい場合や、子宮内膜が卵管や卵巣などの子宮以外の場所にできる「子宮内膜症」を発症していることにより、妊娠がしにくくなっている場合に、人工授精が有効であることがあります。


男性側に不妊原因があるケースでは、精子の数や動きに問題がある場合や、勃起障害、射精障害といった性機能障害を抱えている場合に人工授精が有効です。


また、夫婦生活自体がもちづらい場合やタイミング法で妊娠しづらい場合、不妊の原因がはっきりとしないケースでも、人工授精が行われます。


妊娠の成功率

妊婦

医療機関によっても異なりますが、人工授精の成功率は人工授精を受けた人のうち、おおよそ5%から10%ほどです。


自然妊娠と同様、成功率は年齢によって大きく異なり、女性が30代であれば10%から15%ほどですが、年を重ねるごとに確率は下がっていきます。男性も加齢によって精液量が減り精子の運動能力も下がることから、治療は早めにスタートすることが推奨されます。


治療回数と妊娠成功率

人工授精は女性の体への負担は少なく、成功するまで何度でも試みることはできますが、人工授精で妊娠した人の約70%が3回目までに妊娠しており、約90%の人が6回目までに妊娠しています。よって、3回から6回程度治療を行っても妊娠しない場合は、体外受精など次の手段について考えはじめることが大切です。


母体や赤ちゃんへのリスク

人工授精と自然妊娠の違いは、精子が膣という道を通るか通らないかだけです。そのため、母体へのリスクは自然妊娠と変わりません


障害を持った赤ちゃんが生まれる確率においても、自然妊娠と変わらないとされています。人工授精のリスクの方が高いとされるデータについては、人工授精を行う対象者の年齢が高いなど他の要因によるものと考えられます。


人工授精による主なリスクは、排卵誘発剤の副作用による母体負担などが挙げられます。これらについての詳細は「副作用」で後述します。


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治療の流れとスケジュール

人工授精の治療の流れとスケジュール

月経が終わった頃から、超音波検査などを行って「子宮内膜の厚さ」「卵胞の大きさ」を確認し、排卵日を予測します。その後、予測した排卵日から人工授精を行う日程が決められます。精子の寿命は2、3日(長いもので約1週間)あるものの、卵子の寿命は約24時間しかないため、人工授精は排卵日の前日か当日が良いとされています。


人工授精当日の朝、男性から精子を採取し、専用カテーテルによって子宮内に注入します。


人工授精から約2週間後に尿検査や血液検査を行い、hCGホルモン値を測定することで妊娠の判定がされます。また、その後の超音波検査により、胎嚢が確認されると正常な妊娠と確定されます。


人工授精後の過ごし方

人工授精後の過ごし方は自然妊娠と基本的には同じです。血行が悪くなる喫煙や、赤ちゃんに異常をきたしかねない飲酒は避け、十分な睡眠時間を確保し規則的な食事を摂ることが大切です。夫婦生活を人工授精当日に行ってもかまいません。


ただし、人工授精後に腹痛や出血がある場合は、膣や子宮が傷ついている可能性もあるため、すぐに病院に行きましょう。


また、厚生労働省では「妊娠可能なすべての女性は葉酸を十分に摂るように」と呼びかけを行っています。赤ちゃんの先天的な神経疾患の発症リスクを減らすためにも、葉酸を積極的に摂取しましょう。


痛みはあるのか

人工授精では、基本的に痛みはほとんどないとされていますが、器具を挿入する際や、精子を注入する際に痛みを感じることがあります。


  • 器具を入れるとき
    精子を注入するための器具を入れる際に、子宮の入口である子宮頸管が牽引されて痛みを感じることがあります。特に子宮頸管が大きく傾いている人は痛みを感じやすいとされています。
  • 精子を注入するとき
    精子を注入する際に、器具が子宮に当たり痛みを感じる場合があります。これは医師の技術力などによっても変わってくるものなので、痛みを感じたときは医師に伝えましょう。

また、排卵後に子宮収縮(子宮を構成する筋肉が縮んで固くなること)が起こることで痛みを感じることもあります。


産み分けはできるのか

パーコール法では、精子を遠心分離機にかけた際に、重さの違いを利用してY染色体とX染色体をもった精子に分けられるため、男の子と女の子の産み分けができるとされてきました。しかし、日本産婦人科学会はこれを科学的根拠がないため否定しています。


精子の選別方法

夫から採取した精液は、多くの場合、そのまま注入されることはありません。妊娠率を上げるために不純物を取り除き、良質で元気な精子を選んで注入されます。方法は大きく2つあります。


パーコール法

パーコール法

精液を遠心分離機にかけ撹拌したのち、上澄みを除去します。その後、下の方に溜まった精子を洗浄することで、運動率の高い良質な精子だけを濃縮します。


スイムアップ法

スイムアップ法

精液を遠心分離機にかけ上澄みを除去したのち、培養液を混ぜて1時間程度静置させます。元気な精子が上にあがってくる性質を利用して、良質な精子を採取します。


かかる費用

人工授精にかかる費用は、保険適用外のため施設によって変わりますが、1回あたり1万円から3万円となります。この他に検査や排卵誘発剤の費用が別途かかります。


副作用

腹痛

母体へのリスクは自然妊娠と変わりませんが、排卵誘発剤を使う場合は、その副作用について知っておく必要があります。


不妊治療では主に「クロミッド」などの排卵誘発剤が使用されます。多くの場合副作用はみられないものの、まれに、お腹の張りや腹痛が現れることがあります。これは、排卵が大量に発生し「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」を引き起こしていることが考えられます。


また、排卵の数が多くなるため、双子などの多児率が高くなります。一般的な多児率は約1%であるのに対し、クロミッド使用時は約5%に上がるとされています。一卵性ではなく、二卵性となるケースが多くみられるのも排卵誘発剤の特徴です。


→排卵誘発剤については詳しくはこちら


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人工授精と体外受精の違い

体外受精とは、文字通り、卵子を体外に出して精子と受精させ、培養したのちに子宮内に戻すという方法です。卵子と精子の出会いまでの行程を人工授精よりもさらにショートカットした方法ということができます。


体外受精は、卵管に問題があって排卵した卵子を取り込みにくい、または、精子の数が少なすぎて子宮内で生き残れないといった場合などに有効です。


→体外受精については詳しくはこちら


まとめ

今、日本で生まれてくる赤ちゃんたちの約10%は人工授精で生まれているといわれており、人工授精はもはや珍しいものではなく非常に身近なものです。コスト的な負担もそれほど大きくはありませんので、不妊症に悩むご夫婦は一度前向きに検討してみると良いでしょう。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


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