【医師監修】排卵誘発剤とは?薬の種類、副作用、使用のタイミングについて

更新日:2017/03/27

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排卵誘発剤の主な効果は、卵子を複数排卵させて受精する確率を上げることです。薬の種類には飲み薬と注射があり、不妊治療のタイミング法や人工授精(AIH)、体外受精(IVF)といった全てのステップにて使用されています。ここでは、薬の種類や費用、使用のタイミングなど、妊娠するための注意点などについて解説します。

薬

●排卵誘発剤とは
●主な飲み薬
●注射薬、点鼻薬
●排卵誘発剤による副作用
●かかる費用
●妊娠するために
●まとめ

排卵誘発剤とは

排卵誘発剤とは、排卵をコントロールし、より多くの良い卵子を得るために用いられるホルモン薬です。


主に自然周期では排卵がうまくいかない「排卵障害」に適応されますが、排卵障害がなくても、排卵数を増やし受精や着床のチャンスを広げる目的で排卵誘発剤が多く使われています。


薬の種類

注射と錠剤

排卵誘発剤は、卵巣に刺激を与えて質の良い卵子を育てるものと、排卵を促進させるものの2種類に分かれ、効果は排卵誘発剤の種類によって異なります。


薬の形態は主に飲み薬と注射ですが、点鼻薬のこともあります。一般的に、飲み薬よりも注射のほうが卵巣を強く刺激するため、はじめは経口服用薬を使い、効き目が不十分であれば注射を取り入れていくという流れになります。


また、薬の特性の違いを利用して数種類を組み合わせて使うことも多く、いつからどの薬を投与するかなど、治療方法は何パターンもあります。年齢や体質などによっては使えない薬もあるので、患者の症状に合わせて、医師から適切な薬と投薬方法が提案されます。


主な飲み薬

錠剤

飲み薬を使うか注射薬を使うかは、ホルモンの値によっても変わりますが、効果が穏やかな飲み薬からはじめるのが一般的となっています。代表的な排卵誘発剤の飲み薬には「クロミッド」と「セキソビッド」があります。


クロミッド

排卵誘発剤クロミフェンのうち、広く処方されているのがクロミッド(クロミフェンの商品名)です。クロミフェン製剤には、他にセロフェン、フェミロン、スパクロンといった商品がありますが、効果はクロミッドと同じです。


【 効果 】

卵胞を育てるための薬であり、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を促進します。


【 飲み方 】

月経が始まって3日目頃から、5日間毎日服用するのが一般的です。まずは1日1錠(50mg)ずつ服用し、必要に応じて量を増やしていきます。


【 費用 】

1錠あたり約100円(薬価)であり、一周期あたりの目安は数百円から1000円前後です。


【 備考 】

体外受精や顕微受精で自然周期採卵(基本的に排卵誘発剤に頼らない採卵)を希望する場合も、刺激の弱いクロミッドを服用することがあります。


セキソビッド

セキソビッドは、シクロフェニルという排卵誘発剤の商品名です。


【 効果 】

卵胞を育てるための薬です。


【 飲み方 】

月経が始まって3日目頃から、7日から10日間、毎日服用するのが良いと考えられています。1日4錠から6錠(1錠あたり100mg)を数回に分けて服用します。


【 費用 】

1錠あたり約30円(薬価)であり、一周期あたりの目安は数百円から1000円前後です。


【 備考 】

効果はクロミッドよりも緩やかです。そのため、クロミッドの服用で頸管粘液が減ってしまう副作用が出た人や、もともと自然排卵があり、それを少しサポートする程度の効果があれば十分な人には、セキソビッドのほうが適していることもあります。


テルグリド(テルロン)

【 効果 】

プロラクチンは産後の授乳中にたくさん分泌されるホルモンですが、不妊治療中に多く分泌されると排卵しにくくなるため、この薬によって分泌を抑制します。


【 飲み方 】

プロラクチンの値などを確認しながら服用を開始し、数週間から妊娠するまでの数か月間、続けて飲む場合が多いです。通常は1回1錠(0.5mg)を1日2回服用しますが、症状などによって増減されます。


【 費用 】

1錠あたり約90円から140円(薬価)です。一周期あたりの費用は、服用量や期間により異なります。


注射薬、点鼻薬

注射薬

注射薬の効果は飲み薬よりも高い一方で、多少の痛みがあり、注射部位が腫れることもあります。特に、筋肉注射であるhCG注射は痛みが強めです。


hMG注射

【 効果 】

hMGはヒト下垂体性性腺刺激ホルモンといって、卵胞(卵子を保護、育成する組織)を育てる役割を担うものです。hMG製剤には卵胞刺激ホルモン(FSH)と、排卵を促す作用のある黄体ホルモン(LH)が含まれています。


【 使用時期 】

月経が始まって3日目頃から9日目頃までに、何回か注射するのが一般的です。


【 費用 】

薬剤の種類や量、保険適用有無等で異なりますが、目安は1回あたり1500円から3000円程度です。


【 備考 】

クロミッドの服用で効果が十分ではなかった場合に使用されることがあります。また、注射の種類や投与量を変えることで、排卵日までに育てる卵胞数を調整しやすいともいわれています。


FSH注射

FSH注射は2009年から自己注射が認可されています。通院の場合は腕やお尻に注射するのに対して、低用量のFSHを自己注射する場合は、専用のペン型注射器を使って腹部に注射します。


【 効果 】

FSHは卵胞刺激ホルモンで、hMGと同じく、卵胞を育てるために使われます。hMG製剤との違いは、黄体ホルモン(LH)をほぼ含まないという点です。


治療においてはhMG注射とFSH注射のどちらかを選んだり、併用したりすることがあります。


【 使用時期 】

hMG注射とほぼ同様に、月経が始まって3日目頃から8日目頃まで、FSH 注射を毎日続けます。

体外受精に用いられる場合は、投与量が増えて期間も長くなる傾向があります。


【 費用 】

薬剤の種類や量、保険適用有無によっても変わりますが、目安は1回あたり2000円から6000円前後です。


hCG注射

hCG注射の使用時期

【 効果 】

hCGはヒト絨毛性性腺刺激ホルモンといって、不妊治療では育てた卵胞を排卵させるために使われる薬です。


【 使用時期 】

医師の判断によりますが、月経周期の11日目頃に、卵胞が十分に育って20mm近い大きさになったところで注射を行います。すると注射から36時間から40時間で排卵が起きます。


よって、hCG注射のあとは、

  • タイミング法…2、3日の間にタイミングを取る
  • 人工授精…翌日に受精を行う
  • 体外受精…34時間から36時間後、かつ排卵直前に採卵する

が理想とされています。


【 費用 】

1回あたり数百円から1000円(3割負担の保険適用時)です。


GnRHアゴニスト

商品名はスプレキュア、ナサニール、ブセレキュアなどです。


【 効果 】

GnRHアゴニストは排卵を抑制する薬で、採卵前に排卵してしまうリスクを防ぐために使います。GnRHとはゴナドトロピン放出ホルモンのことで、卵胞刺激ホルモンと黄体ホルモンの放出を促しています。その働きを抑制する薬がGnRHアゴニストです。


【 使用時期 】

月経の1週間前くらいからGnRHアゴニストを経鼻投与し、採卵の直前まで続けます。月経が始まって3日目からはFSH注射を5、6日間ほど毎日併用し、その後に卵胞が20mm近くまで大きくなったらhCG注射を打って排卵させるのが一般的です。


この方法を体外受精に適用したものを「ロング法」と呼んでいます。


【 費用 】

1クールあたり2万5000円から3万円程度です。


GnRHアンタゴニスト

商品名はセトロタイド、ガニレストなどです。

【 効果 】

GnRHアンタゴニストも、GnRHアゴニストと同様に、排卵を抑制するために用いられます。


【 使用時期 】

GnRHアゴニストとは違い、前もって点鼻薬を投与する必要がなく、月経が始まって3日目からFSH注射を開始し、卵胞の大きさが14mmくらいになったらGnRHアンタゴニスト注射を3、4日併用し、排卵を抑制します。


この方法を体外受精で行う「ショート法」も一般的な治療法です。


【 費用 】

1クールあたり2万5000円から3万円程度です。


排卵誘発剤による副作用

排卵誘発剤はホルモン薬であり、投与すれば体内のホルモンバランスに多少なりとも影響を与えるうえ、相性の良し悪しもあります。


経口薬の服用や注射の後にみられる一般的な症状(軽めの副作用)としては、動悸、発熱、倦怠感、吐き気、眠気、腹痛、下腹部痛などが報告されています。この他に注意すべき副作用には、次のようなものがあります。


卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

採卵後に、卵巣が腫れたり、腹水が溜まったりする症状を卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼びます。OHSSは、経口薬のクロミフェンやhMG注射、hCG注射の副作用として起きることがあります。


医学的な進歩により発症頻度は減っていますが、発症すると自覚症状としてお腹の張りや、尿量の減少、胃の痛み、息苦しさなどが現れます。腹水や胸水がたまり、血管の中が脱水になって命にかかわることがあるくらい恐ろしいものです。


OHSSの疑いがあるときは、排卵誘発剤の投与や採卵は中止してOHSS症状の治療を優先します。


双子の確率が上がる

双子

自然周期で排卵する場合、月経時の卵胞数は20個程度で、最終的に排卵する数は1個だけです。しかし、自然排卵で妊娠可能な女性に排卵誘発剤を使った場合は、複数の卵子が排卵されるので、2人以上の胎児を同時に妊娠する(多胎妊娠)可能性が高まります


頸管粘液が減る、子宮内膜が薄くなる

頸管粘液の量は、排卵の頃に女性ホルモンであるエストロゲンの作用によって増え、精子を蓄えて卵管へ送り込みやすくするという重要な役割を担っています。しかし、クロミフェンを服用している人の約15%に、頸管粘液が減る、子宮内膜が薄くなるといった副作用がでることがあります。子宮内膜が薄くなると着床しにくくなる恐れがあります。


ほとんどは体質的な問題なので、クロミフェンからセキソビットに変えるか、hMG注射やFSH注射に切り替えれば多くは解決します。


月経不順になる

月経周期

正常な月経周期は25日から32日で、出血は3日から1週間程度続くのが一般的ですが、排卵誘発剤の使用によってホルモンバランスが変わり、

  • 月経周期が遅れたり早まったりする
  • 月経が来ない
  • 月経の出血量が少ない

といったことが起こる可能性があります。さらに同じ薬を服用し続けていると、効果が薄まって排卵しにくくなることも考えられます。


また、不妊治療を行うことのストレスが月経不順を起こすこともあるので、医師に相談するだけでなく、自分でもストレスをためないよう対策を考えることが大切です。


かかる費用

費用

飲み薬と注射の費用を合計すると、治療方法によって1000円から5万円程度までの開きがあるといえます。


不妊治療の初期段階では、検査や治療の多くに保険が適用されます。ただし、治療が進むことによって保険の適用外となることもあるので注意しましょう。


自己注射の場合

自己注射

前述したように、FSH注射などについては、自己注射が認可されています。在宅で自己注射をするときは専用のペン型注射器を使い、1日数回注射を行います。


自己注射キットは比較的高額で、量にもよりますが費用はだいたい1クールで3万円から6万円程度かかります。


妊娠しやすいタイミングとは

受精を試みるベストなタイミングは、実は排卵日当日ではなく、排卵日直前の2、3日の間です。精子の寿命はだいたい3日から5日で、しばらく頸管粘液の中に貯えられてから徐々に卵管へ送り出されるので、排卵の4、5日前から受精可能なのです。


妊娠は様々な条件が揃ったときに初めて成功するのですが、不妊治療に臨むにあたって「排卵日よりもその直前のほうが妊娠しやすい」ということは、覚えておきたいものですね。


タイミングを逃さないために

上述の理由から、妊娠のタイミングを逃さないためには排卵日の予測が重要となります。


卵胞が順調に成熟すると、排卵直前に20mmほどの大きさになるので、排卵日が近づいてきたら超音波検査を受けて卵胞の大きさや子宮内膜の厚さを調べたり、採尿して黄体ホルモン(LH)の量を調べたりして、排卵日を予測してもらうと良いでしょう。


まとめ

排卵誘発剤を使うことで、質の良い卵子をたくさん増やして育てたり、育てた卵子の排卵を促したりと、排卵をコントロールすることができます。それによって、受精、着床、妊娠の可能性の向上が期待できます。


一方で、排卵誘発剤の副作用については誰もが気になるところです。注射の効果は経口薬よりも強いので、投薬に際しては十分な注意が必要です。特に排卵誘発剤を2種類以上併用するときは、服用方法や期間について医師から指示がありますので、きちんと守りましょう。


また、卵胞を育てるための注射は、一定の期間、毎日行わなければいけないことも多いので、通院がおろそかにならないように注意しましょう。仕事をしている人は、平日の夜間診療を行っている病院や、休日に診てもらえる病院を選ぶことも大切です。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


記事監修医師宋美玄先生  

【 監修者 】
 産婦人科医・医学博士
 宋美玄 先生

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