体外受精(IVF)とは?成功率、リスク、治療の流れ、費用について

更新日:2017/03/30

体外受精は、主に人工授精で妊娠しなかった際にステップアップする方法です。卵子と精子を採取し、培養液の中で受精させた後、子宮に移植することで妊娠率を高めます。ここでは、体外受精の成功率やリスク、治療の流れ、受精率、分割率、胚盤胞到達率、費用などについて解説します。

夫婦

●体外受精とは
●治療の流れとスケジュール
●受精率、分割率、胚盤胞到達率
●かかる費用
●副作用
●体外受精と顕微授精の違い
●まとめ

体外受精とは

体外受精は、卵子を体外で精子と受精させ、培養したのちに子宮内に戻すという方法です。卵子と精子の出会いまでの行程を、人工授精よりもさらにショートカットした方法ということができます。


不妊治療は、不妊原因やそれぞれのケースに適した方法で行われますが、体外受精はほとんどの場合で有効だとされています。


体外受精は「IVF」または「IVF-ET」とも呼ばれます。


対象となる人

体外受精の成功率を高めるためには、ステップアップのタイミングも重要だといわれます。一般的には、人工授精を数回(目安は3回から6回ほど)行っても妊娠できないときに、体外受精へのステップアップが検討されます。


医療機関や医師の方針で提案内容が違ってくることもあるため、医師やパートナーと良く相談してみましょう。


初回治療から体外受精を選択する場合も

ホルモン検査をして、卵子の数が少ないと推測される場合などは、人工授精を経ずに体外受精から試したほうが良いこともあります。


また、卵管が閉塞しているなどの「卵管障害」や、排卵に何らかの異常がある「排卵障害」子宮筋腫などの手術後の癒着が原因で妊娠しづらいなどの場合は、人工授精が有効ではないため、初回の治療から体外受精が選択されます。


こうした生殖器官の問題を抱えていて、良い卵子と精子があるにも関わらず受精や着床に至らない場合は、体外受精が有力な治療法となります。


妊娠の成功率

妊婦

個人差はありますが一般的には、女性の妊娠率は20代後半あたりから徐々に落ち始め、37歳頃を過ぎると急降下します。年齢と共に、卵子の質が低くなることは否めず、妊娠しても途中で流産してしまう確率が高くなります。そのため、体外受精の成功率も女性の年齢によって変わってきます。


日本産婦人科学会の報告によると、2013年の体外受精や顕微受精を含む高度な生殖補助技術(ART: Assisted Reproductive Technology)による妊娠成功率は、全年代では総治療周期数368,764に対し「妊娠率16.3% 」となっています。これを年齢別でみると、以下のような結果となっています。


年齢

総治療周期数

妊娠率

25歳

673

24.7%

30歳

8,009

26.3%

35歳

22,618

23.2%

40歳

33,543

13.7%


治療回数と妊娠成功率

体外受精で妊娠できた人のうち、約80%が3回目の治療で、約90%の人が5回目までの治療で妊娠しています。ですが、6回目以降で妊娠した人もいるため、何回までが良いとはいえません。


母体や赤ちゃんへのリスク

体外受精を行うことによる母体へのリスクは、自然妊娠と変わりません


また、体外受精が原因となってダウン症やその他の染色体異常、遺伝病のリスクが高まるということはありません。よって、赤ちゃんが先天性の障害を持って生まれてくる確率は、自然妊娠の場合と変わらないと考えられています。


子宮の下部に受精卵が着床する前置胎盤や、早産、がんの遺伝などを心配する人もいますが、それらが体外受精に顕著であるという医学的な根拠はみられません。


排卵誘発剤の副作用が主なリスク

体外受精の主なリスクは、排卵誘発剤の副作用や、卵巣から採卵するときの痛み、麻酔による影響、多胎妊娠(双子以上の妊娠)による母体負担などが挙げられます。これらについての詳細は、「副作用」で後述します。


治療の流れとスケジュール

体外受精での採卵の方法としては、「自然周期採卵」と「卵巣刺激法」が行われています。


自然周期採卵

自然の排卵周期に合わせて卵子をベストなタイミングで採卵する方法です。薬などを使わないため、体に優しい方法です。


卵巣刺激法

排卵誘発剤で卵巣刺激を行い、より多くの卵胞の成熟を促したうえで卵子を採卵する方法です。排卵障害や月経不順などにより排卵回数が少ない場合に、卵巣刺激法が有効であると考えます。


最近では、排卵誘発剤を使っても低刺激に抑えたいと考える人も多いようですが、低刺激の場合、一度に採取できる卵子の数が少なくなるため、結果的に採卵のトータル回数が増えてしまう可能性があることを認識しておく必要があります。


卵巣刺激法の具体的な流れ

卵巣刺激法では「アンタゴニスト法」「ロング法」「ショート法」など様々な方法があり、体外受精に要する期間や通院日数、費用は治療法によって大きく変わります。


一例として、「GnRHアゴニストを使ったロング法」を選択した場合、治療の流れは下図のようになります。

GnRHアゴニストを使った体外受精のスケジュール

前準備(排卵抑制)

GnRHアゴニストを使った体外受精では、排卵日をコントロールするために、月経の約1週間前から(排卵期が終わった21日目頃から)排卵抑制剤のGnRHアゴニストを経鼻投与しはじめます。


これを採卵の直前まで続けることで、採卵日の前に排卵してしまうことを抑制します。


卵巣刺激

注射

卵巣を刺激し、卵胞を育てる方法として一般的なのは、以下の2つです。


  • 経口薬の服用
    クロミフェン、セキソビットなど
  • 注射
    hMG:ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン、FSH:卵胞刺激ホルモン

GnRHアゴニストのロング法の場合は、月経が始まって3日目からFSH注射を5、6日間ほど毎日続けます。仕事などで通院できないときは、FSHを自己注射することも可能です。


排卵誘発

卵胞期(卵胞が成熟する時期)に入ったら超音波検査で卵胞の数と大きさを確認し、卵胞が20mm近くになったところで排卵誘発のためにhCG注射(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)をします。そしてhCG注射後、34時間から36時間で排卵直前の状態となるので、採卵を行います


→排卵誘発剤について詳しくはこちら


採卵

採卵は、膣から細い採卵針を挿入して卵巣の中の卵胞に刺し、卵子を吸い上げるようにして行います。


採卵の所要時間は数十分程度です。2時間ほど安静にすれば帰宅できます。痛みが多少あるため全身麻酔(静脈麻酔)や局所麻酔で対処しますが、希望により無麻酔で行うことも可能です。医師の方針で麻酔の有無が決定されることもあります。


採卵個数については、以下の通りです。

  • 一般的には、5個から15個ほど(個人差あり)
  • 年齢によっては注射をしても個数が増えないため採卵数が1、2個となる場合も
  • 卵子が育たず空胞や未成熟卵になってしまい、採取できる卵子が0個になる場合も
  • 排卵誘発剤を用いない自然周期採卵では、採卵数は通常1個

受精と胚培養

受精と胚培養

採った卵子は培養液入りのシャーレに移されます。その後、体外受精の当日に採精した状態の良い精子を、卵子の入ったシャーレの中に入れ、卵子の中に1匹の精子が入ると受精となります。


受精卵ができたらその後2、3日間培養して、受精卵の細胞が4個から8個に増えて「分割胚」と呼ばれる状態になるまで育てます。


胚移植

【 新鮮胚移植の場合 】

分割胚の状態になる頃には、子宮内膜(子宮の表面部)の厚さも増して着床の準備が整いますので、分割胚となった受精卵を子宮内に戻します。これを胚移植といいます。


通常は分割胚を移植しますが、成功率を高めるために、約5日間かけて「胚盤胞」という状態になってから移植する「胚盤胞移植」という方法がとられることもあります。


移植は、カテーテルを使って子宮に胚(もしくは胚盤胞)を注入する方法で行うため、出血や痛みはほぼありません。胚移植したあとはそのまましばらく横になり、帰宅後も安静にします。翌日以降は、仕事や家事などの日常生活を送っても大丈夫ですが、激しい運動などは避けましょう。


【 凍結胚移植を行う場合も 】

良い受精卵が余分にできた場合は凍結保存しておいて、万が一妊娠に失敗した場合、次回以降の周期で移植するという「凍結胚移植」という方法も良く行われています。


移植する胚数は通常1個ですが、35歳以上の女性など妊娠率が低くなるケースでは同時に2個移植することがあります。しかし、この方法は多胎妊娠のリスクがあるため滅多に行われなくなりました。


黄体ホルモンの補充

薬

移植した受精卵が、子宮内膜に根をはって着床するまで数日かかるとされています。


自然妊娠では、排卵後に卵巣から女性ホルモンの黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されて、同じく女性ホルモンのエストロゲンと共に受精卵が着床しやすい環境を整えます。


体外受精ではその代わりに、黄体ホルモン剤を飲み薬や注射で補うことで、着床率を高めています。黄体ホルモンは、採卵後から補充をはじめ、胚移植から約2週間後の妊娠判定を行うまで続けられます。


妊娠判定

妊娠判定は2段階で行います。


胚移植から約2週間後(基礎体温の高温期12日目から14日目)に採尿か採血を行い、hCGホルモン値を測定することで妊娠の判定がされます。さらに、胚移植から約3週間後に超音波検査を行って、胎嚢が確認されれば正常な妊娠と確定されます。


受精率、分割率、胚盤胞到達率

  • 受精率…約70%から80%
  • 分割胚まで成長する確率…約60%
  • 胚盤胞まで成長する確率…約50%

もちろん個人差は大きく、また、医療機関によって判断基準が異なるため、上記はあくまでも参考数値となります。


かかる費用

体外受精に必要となる平均的な金額は、1回あたり、20万円から50万円となります。


ただし、体外受精や顕微授精は「高度生殖医療」といって、保険対象外の治療なため、金額設定は医療機関によって異なります。


卵巣刺激法の場合の費用例

卵巣刺激法の場合、薬代や採卵数が増えるため、自然周期採卵に比べ費用は高くなります。


ただし、良い受精卵を凍結保存できた場合は、次回の治療で採卵を行わないため、通常2回目以降の治療費を10万円以下に抑えることができます。


一例として、「GnRHアゴニストのロング法」の1回あたりの費用は、以下のようになります。

項目

費用の概算

卵巣刺激(排卵誘発剤)

1万5000円

アゴニスト(点鼻薬)

3万円

採卵、採精

30万円

培養から胚移植

10万円

その他:

採血、超音波検査、黄体ホルモン補充など

1万円

1回目の合計

45万5000円


助成金

不妊治療では「特定不妊治療費助成事業」という医療費の補助制度があり、指定医療機関を受診すると自治体から助成金が出る可能性があります。


採卵だけでは補助金がもらえず、移植までしないと対象にならないこともあるので、住んでいる自治体の役所で確認してください。


→不妊治療でかかる費用と助成金について詳しくはこちら


副作用

体外受精で考えられる主なリスクについて解説します。


卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤の投与によって、卵巣が腫れたり腹水が溜まったりするOHSSを引き起こすことがあります。近年は以前よりも発症頻度が減っていますが、発症すると急な腹部の張りや、尿量の減少、胃の痛み、息苦しさなどの症状が現れます。


OHSSが疑われる場合は、排卵誘発剤の摂取や採卵は中止して症状緩和を優先します。


腹腔内や膀胱の出血

採卵によって、まれに腹腔内出血や膀胱出血が起きる可能性があります。


ごく細い採卵針を使うため卵巣出血はあまりないと考えられていますが、採卵後に腹腔内出血がみられた場合は、治療のため手術が必要になることがあります。


特に卵巣の位置が正常でない人は、膀胱を通過して採卵を行う必要があるため、膀胱出血が起こることがあります。一時的な出血で収まることがほとんどですが、血尿が続く場合は病院を受診する必要があります。


細菌の感染

採卵の際、膣内から腹腔内へと細菌が入ってしまうことで、発熱や腹痛の症状が出ることがあります。


採卵の前に、膣内を消毒することである程度防ぐことができます。また、予防として抗生剤が処方されることもあります。


多胎妊娠(双子以上の妊娠)

双子

通常、多胎妊娠を防ぐために、移植される胚の数は1個です。しかし、妊娠の可能性を高めるために同時に2個の受精卵を移植した場合、二卵性双生児を妊娠する可能性が高くなります。


胚移植後の妊娠判定で超音波検査を行ったときに、胎嚢が2つあれば二卵性双生児となります。一卵性双生児は胎嚢が1つなので、心拍が確認できる状態になってから分かります。


体外受精と顕微授精の違い

体外受精が卵子に精子を振りかけて自然に受精するのを待つのに対して、顕微授精では卵子の中に直接精子を注入します。


体外受精で上手く受精しなかった場合や、男性の精液中の精子濃度が非常に低いなどの場合に、顕微授精が有効となります。


→顕微授精について詳しくはこちら


まとめ

体外受精は、人工授精よりも妊娠率が高く、不妊治療をステップアップするときの有力な選択肢となります。しかし、女性が高齢になるほど体外受精の成功率は低下するため、ステップアップの検討を早めに行ったり、体外受精を行わない周期には、タイミング法や人工授精といった、他の不妊治療法も取り入れたりして、妊娠の可能性を広げたほうが良いでしょう。


また、一口に体外受精といっても、そこには様々な治療内容が含まれていて、卵巣刺激の方法も何種類かあります。体外受精には身体的なリスクや治療費の自費負担も伴いますので、医師と相談のうえで、自分の不妊の症状に適した治療法を選ぶことが大切です。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


記事監修医師宋美玄先生  

【 監修者 】
 産婦人科医・医学博士
 宋美玄 先生

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