≪医師監修≫子宮内膜症とは?原因、症状、治療、妊娠への影響について

更新日:2017/12/11

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近年、日本では子宮内膜症の患者数が増加しており、成人女性のおよそ10人にひとりが子宮内膜症といわれています。患者数増加の理由としてあげられるのが、月経回数の増加です。子宮内膜症は月経の影響(女性ホルモンの影響)を受け発症する疾患であり、月経を繰り返すことで重症化する疾患です。ここでは子宮内膜症の原因と症状、治療、妊娠への影響について解説します。


記事監修医師堀口貞夫先生  

【 記事監修 】
主婦会館クリニック 院長
堀口貞夫 先生


●子宮内膜症とは
●原因
●症状
●ステージ分類
●治療方法
●検査方法
●妊娠への影響
●まとめ


子宮内膜症とは

子宮内膜症は本来子宮内腔を覆う組織である子宮内膜が、子宮以外の骨盤内の周辺組織に発生し増殖する疾患です。


子宮内の子宮内膜は、月経周期の女性ホルモンの影響を受けて受精卵の着床に備えて厚みを増し、妊娠が成立しなければ剥離し月経血とともに体外に排出されます。これが月経ですが、子宮以外に発生した子宮内膜でも同じように、月経周期の女性ホルモンの影響をうけ増殖、剥離を繰り返すのです。しかし、子宮以外に発生した子宮内膜の場合、体外に排出されずに体内に残り、それが組織の炎症や癒着などを引き起こします。それにより月経痛をはじめとした様々な痛みが発生するのです。


子宮内膜症の発生する好発部位

子宮内膜症ができやすい場所

子宮内膜症の発生する好発部位としては、卵巣、腹膜、ダグラス窩(か)と呼ばれる子宮と直腸の間のくぼみ、腸など、子宮周辺の骨盤内の臓器や組織が多いのですが、まれに肺などにも発生することがあります。


子宮内膜症になりやすい人

前述のとおり、月経を繰り返すことが子宮内膜症の発症や重症化のリスクになりますので、初経年齢が早い人、月経期間が長い人、月経周期が短い人、出産経験がない人では子宮内膜症になりやすいといえます。


また、女性の社会進出の進展など、現代女性のライフスタイルが大きく変化したことに伴い、女性が受ける社会的ストレスも大きくなり、健康にも様々な問題が生じています。ホルモンバランスに影響を与えるストレスの多い人も注意が必要です。


原因

子宮内膜症の原因は不明ですが、月経時に剥がれ落ちた子宮内膜の一部が、卵管を逆走して卵巣や腹部臓器に達して増殖するという説が最も有力視されています。生殖器関連の疾患ということや性交痛などがみられることから、性行為が原因なのではないかと悩む人も多いのですが、性行為感染症(性病)が原因で発症することはありません。


症状

子宮内膜症の主な症状は疼痛と不妊です。


初期症状

子宮内膜症では、月経痛などの月経困難症あるいは、月経とは無関係の下腹痛や排便痛などの症状がみられます。月経痛がだんだんひどくなり、鎮痛剤を使う回数が増えてきたという場合には注意が必要です。月経を繰り返すうちに鎮痛剤が効かなくなり、月経の度に痛みで寝込むという人も多くみられます。中には痛みで救急搬送される人もいるくらいです。


他にも月経時以外の下腹部痛や腰痛、排便時や性交時の痛みなどの疼痛症状が多くみられ、下痢、便秘、頻尿といった消化器症状などもみられます。また、生殖器以外の胸膜・肺、腸管、尿路などに子宮内膜症が発生している場合、気胸の発生による突然の胸の痛みや血痰、下血、血尿などの症状が現れることもあります。


しかし、必ずしもこれらの症状があるとは限りません。不妊を目的に受診した方で子宮内膜症が見つかるケースも多くみられます。卵巣や卵管に子宮内膜症が発生すると、卵子の産生および活動に支障をきたすことから不妊となります。逆にいえば、不妊症の人には子宮内膜症があることが多いのです。


進行症状

子宮内膜症は本来良性の病気で、命に関わる疾患ではありませんので、症状がなければ治療の必要はありませんが、卵巣内に子宮内膜症が発生し、嚢胞(のうほう)を形成した卵巣チョコレート嚢胞は重症化しやすいので注意が必要です。卵巣チョコレート嚢胞は大きくなると破裂して激痛を起こす可能性があり、また極めてまれですががん化することもあるので、定期的に検診を受けることが重要です。


症状チェック

月経痛が寝込むほど強いこともありますが、前項の痛みなどの症状がみられるという場合は早めに婦人科を受診することが重要です。


ステージ分類

子宮内膜症のステージは、米国生殖医学会のr-ASRMの分類が用いられています。r-ASRM分類では、腹腔鏡検査による病変部の観察で、腹膜や卵巣の子宮内膜種の病変部の深度や大きさ、癒着の程度などをスコア化し、合計点数によってステージⅠ(微症)1点から5点、Ⅱ(軽症)6点から15点、Ⅲ(中等症)16点から40点、IV(重症)41点以上の4段階に分類されます。表面だけの腹膜病変であればステージはⅠと分類され症状がないことも多く、卵巣チョコレート嚢胞があると、Ⅲ期またはⅣ期に分類されます。


治療方法

子宮内膜症の治療には薬物療法と手術があります。症状の程度と病変部位、重症度、年齢、妊娠を希望するか否かの挙児希望の有無によって治療方法を選択します。

子宮内膜症の治療方法

出典:日産婦誌63(4), 2011. 研修コーナーN-32-36を改変


薬物療法

子宮内膜症に対する薬物療法

子宮内膜症に対する薬物療法には、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)や漢方薬などを用いた痛みを軽減する対症療法と、ホルモン剤を用いたホルモン療法があります。


対症療法

まずは月経痛の原因といわれるプロスタグランジンの産生を抑える作用をもつ、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)で痛みの軽減を試みます。それだけでは痛みが抑えられない場合や子宮の収縮が強い人に対しては、子宮の収縮を抑える薬剤が処方されることもあります。


また軽い精神安定剤により痛みの受容をコントロールすることもあります。また、月経困難症に有効とされる漢方薬を併用することもあります。漢方薬はホルモン療法と併用することでも副作用の軽減に有効との報告もあります。


ホルモン療法

対症療法で痛みのコントロールが十分ではない場合には、ホルモン療法を行っていきます。子宮内膜症は月経の影響を受けて症状が発生する疾患ですので、ホルモン療法で月経を人為的に停止させることで症状の改善を試みます。ホルモン療法には黄体ホルモンのプロゲステロンの濃度を上げて妊娠に近い状態にする偽妊娠療法と、エストロゲンの濃度を下げて閉経に近い状態をつくる偽閉経療法があります。


ホルモン療法は短期間の治療ではすぐに再発してしまいますので、長期にわたって継続することが重要となります。まずは長期間使うことができ副作用の少ない低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP)を用いた偽妊娠療法が第一選択となります。低用量ピルと同成分のLEPで治療効果が不十分であれば、ジエノゲストを用いた偽妊娠療法が行われ、それでも効果不十分であれば、GnRHアゴニストによる偽閉経療法を行いながら手術療法も検討していくことになります。


手術療法

卵巣チョコレート嚢胞がある、骨盤内臓器の癒着が認められる、腹部疼痛症状が強いなどの進行した症例では手術療法が検討されます。超音波検査で、5cm以上の卵巣チョコレート嚢胞が見つかった場合は、破裂のリスクを避けるために早めに手術を行う必要があります。


手術は腹腔鏡または開腹により、卵巣、卵管、子宮を摘出することなく、子宮内膜症による癒着剥離、病変の除去などを行う保存手術と、開腹により子宮と卵巣を摘出する根治手術があります。子宮内膜症は閉経または根治手術を行わない限り完全に治ることはない再発の多い疾患です。手術療法を検討する際には挙児希望の有無によって治療の選択を行うことになります。手術の術式や入院期間、施設によっても異なります。


保存的手術

挙児希望がある場合(妊娠を望んでいる場合)には、卵巣、卵管、子宮を摘出することなく、子宮内膜症による癒着剥離、病変の除去を行います。保存的手術は、腹腔鏡を用いた手術または開腹による手術となります。


腹腔鏡手術は全身麻酔で、腹部に腹腔鏡と手術器具を挿入する穴を開け、モニター画面で病変部を確認しながら行います。大きく腹部を切開する開腹手術に比べて患者さんの身体的負担が少なく、入院期間も数日から1週間程度ですみます。ただし負担が少ないからといって安全な手術ということではなく、腹腔鏡手術特有の合併症が起こる可能性があり、また腹腔鏡手術には執刀する医師の高い技術が必要です。


膀胱、尿管、腸管などの周辺の臓器に病変がある場合や悪性卵巣腫瘍が疑われる場合、子宮腺筋症や複数の子宮筋腫を合併しているような場合は、腹腔鏡ではなく開腹手術による保存的手術が行われます。いずれの方法で保存的手術を行っても、子宮内膜症を根治させる治療ではなく、再発率は3割以上です。


根治手術

根治手術では開腹により卵巣(必要な場合には子宮も)を摘出することにより、子宮内膜症を完全に治すことができます。卵巣を摘出することで女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下しますので、更年期症状と同じような症状がでることがあります。


検査方法

子宮内膜症は、腹腔鏡または開腹で病変部の組織をみてはじめて確定診断ができる病気です。それ以外の検査では内膜症であろうと推定する臨床診断になります。


臨床診断を行うためは、問診、内診、直腸診、超音波エコー、血液検査(腫瘍マーカーCA125のチェック、MRI、CTを行います。内診や直腸診、膣からの超音波検査などに痛みや恥ずかしさなど不安を覚える人も多いのですが、子宮内膜症の臨床診断には重要な検査です。緊張して体に力が入っているとかえって痛みなどの原因になりかねませんので、リラックスした姿勢で検査を受けることが大切です。


検査にかかる費用は医療機関によって異なりますが、保険が適応されますので、MRIやCT検査以外の検査を一通り行っても数千円程度です。より詳細な検査が必要と判断されMRIやCT検査を行うと、保険適応で1万円前後でしょう。


妊娠への影響

前項の通り、卵巣や卵管に子宮内膜症が発生すると、卵子の産生および活動に支障をきたしたり、卵管の通過性が損なわれたりすることで不妊を伴うことが多いのですが、子宮内膜症があるからといって妊娠が不可能なわけではありません


しかし、特に卵巣チョコレート嚢胞などの重症の子宮内膜症がある人では、保存的手術が必要です。ホルモン療法単独では不妊の改善にはつながらないとされています。また、子宮内膜症があってもお腹の中の赤ちゃんの生育、出産に影響はなく、妊娠の影響で子宮内膜症は改善します。


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まとめ

子宮内膜症は月経時の痛みだけでなく慢性的な痛みも含めて、疼痛症状の頻度が高いことからも、女性のQOL(生活の質)を著しく損なう疾患です。さらに約50%の患者で不妊症状があるとされており、不妊治療を目的に医療機関を受診して子宮内膜症が見つかるケースも多い疾患です。月経痛や月経血が過剰に多い月経過多などの月経困難症の症状がみられたら、ただの月経痛とがまんせずに早めに受診することが非常に重要です。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


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