≪医師監修≫不育症と着床障害とは?原因、検査、治療について

更新日:2017/03/27

関連 :

妊娠することはできても、流産や死産を繰り返し、赤ちゃんを授かることのできない状態のことを「不育症」と呼びます。また、着床に問題があり妊娠をできない状態を「着床障害」と呼びます。ここでは、不育症と着床障害について詳しく解説します。


記事監修医師宋美玄先生  

【 記事監修 】
 産婦人科医・医学博士
 宋美玄 先生


●不育症、着床障害とは
●原因
●検査方法
●治療方法の選び方
●まとめ

不育症、着床障害とは

不育症とは、妊娠してもその後流産や死産を2回以上繰り返している状態をいいます。


一方、体外受精で3回以上良好な胚を移植したのに妊娠しない状態を着床障害といいます。妊娠判定で一度は陽性と出たのに胎嚢確認前に流産してしまうといった場合、原因の一つとして着床障害の可能性が考えられます。


原因

不育症や着床障害による流産の原因は、赤ちゃんの染色体異常によるものが約60%から80%を占めているといわれています。染色体異常については偶発的に発生するため、自然妊娠であってもそうでなくても可能性があり、予防や治療を行うことはできません。


しかし、染色体異常ではなく母体側に異常がある場合は、適切な治療を行うことで流産を防ぐことができます。不育症や着床障害の原因と考えられる代表的な要素をいくつかご紹介します。


ホルモン異常

ホルモン異常は内分泌異常とも呼ばれるものです。


卵胞ホルモン(エストロゲン)によって厚くなった子宮内膜は、黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用により受精卵を着床させやすい状態になります。しかし、何らかの原因で黄体ホルモンが十分に分泌されないと着床させにくい状態になります。


また、甲状腺機能異常や糖尿病などにより、ホルモンバランスが崩れることで、妊娠に影響が出る場合もあります。


子宮奇形(子宮が通常の形をしていない状態)

子宮奇形

子宮奇形は、弓状子宮、双角子宮、中隔子宮、単角子宮、重複子宮など様々な種類があります。症状についても個人差があるため一概にはいえませんが、子宮奇形の場合、流産や死産をしやすいとされています。


また、子宮筋腫や、子宮内膜ポリープなどの障害物があると、大きさや位置によっては受精卵が着床しにくくなるといわれています。


自己免疫異常

本来、外からのウイルスなどに対して働くはずの免疫に何らかの異常があると、赤ちゃんは母体にとって異物として認識されてしまい、妊娠を継続できなくなる可能性があります。


また、自己免疫異常による「抗リン脂質抗体」の影響で血栓ができやすくなり、流産しやすくなると考えられています。これを「抗リン脂質抗体症候群」といいます。


血液凝固異常

血液を凝固させる働きに異常があると、胎盤に通じる血管に血栓ができやすくなります。妊娠中に血栓ができると、赤ちゃんに栄養が運ばれなくなり、流産や死産をしやすいといわれています。


検査方法

先に挙げたような、不育症や着床障害の原因を見つけるためには、下図のような検査が行われます。

原因

一次検査

二次検査(選択的検査)

染色体異常

血液検査

(通常スクリーニング)

夫婦染色体検査

ホルモン異常

特殊血液検査

(ホルモン検査)

子宮奇形

超音波検査

子宮卵管造影検査

子宮鏡検査・MRI

自己免疫異常

血液検査

(通常スクリーニング)

特殊血液検査

(抗リン脂質抗体検査)

血液凝固異常

特殊血液検査

(抗リン脂質抗体検査、凝固因子検査)


初診にて不育症もしくは着床障害の疑いがあるとされた場合、想定されうる原因に基づいて2次検査の方法が選択される流れとなっています。

不育症の診断・検査の流れ

結果は3、4日で出るものもあれば、染色体検査のように4週間以上かかるものもあります。


診断確定までにかかる検査の費用は検査機関や項目数にもよりますが、平均して5万円程度が目安となります。


夫婦染色体検査

医師と患者

原則として、夫婦揃って血液を採取し提出します。ただし、検査結果を伝達する際に一方の配偶者が不利益を被らないよう配慮が必要です。染色体異常があった場合でも、どちらかを特定せずに伝えてもらうという選択肢もあります。


また、染色体異常については治療方法がないため、それを明らかにする意義についてもパートナーと相談しておくことが大切です。


ホルモン検査

内分泌検査ともいい、ホルモンを分泌する甲状腺機能や糖尿病の検査を行います。


超音波検査(エコー検査)

子宮の形態検査で、特に3D超音波では中隔子宮と双角子宮の鑑別を行います。


子宮卵管造影検査

卵管に詰まりや奇形、病気がないか、造影剤を投与しレントゲンで撮影します。排卵した卵子にX線をあてないようにするため、検査のタイミングは、月経が終わって排卵までの数日間です。


→卵管造影検査について詳しくはこちら


抗リン脂質抗体検査

自己抗体検査ともいい、抗リン脂質抗体などの自己抗体を検査します。一部は保険適用されますが、多くの検査とそれに伴う治療は保険適用外となります。


凝固因子検査

血液が固まりやすいか、血液を固める「凝固因子」をどのくらい持っているかを検査します。人それぞれ持っている凝固因子が違うため、検査する種類は人によって変わることがあります。


関連するみんなのQ&A

保険適用外の不育症検査、受けるか迷っています

2度の流産を経て、先日血液検査を行…

着床できないのは経血の状態が良くないから?

普段聞けないのでここで思いきってき…



治療方法の選び方

検査で何らかの原因が見つかった場合、治療方法はそれぞれ下表の通りとなっています。

原因

治療方法

染色体異常

特になし

ホルモン異常

支持的精神療法

免疫療法

 -夫リンパ球免疫療法

 -ピシバニール免疫療法

子宮奇形

子宮形成術(必要に応じて)

自己免疫異常

アスピリンとへパリンの併用療法

漢方療法

血液凝固異常

アスピリンとへパリンの併用療法


支持的精神療法

悩みなどを医師に打ち明けることで、不安を和らげる基本的な精神療法です。


夫リンパ球免疫療法

夫の血液細胞であるリンパ球を妻に移植しておくことで、拒絶(流産)を予防するという、世界的にも長年行われてきた免疫療法ですが、効果に関しては否定的なデータが積み重なり、米国FDAは禁止しています。日本でも行われている施設はわずかです。


ピシバニール免疫療法

薬を使うことで免疫機能を働かせて、着床しやすくするという目的の治療法です。夫リンパ球治療に取って代わる療法と考えられていますが、こちらも有効性は確認されていません。


子宮形成術

手術

子宮奇形によって流産が引き起こされる危険性がある場合に、子宮を正常な形に近づける手術です。手術の際はMRIや3次元超音波検査で子宮の形を鑑別し、治療方針を設定する必要があります。


厚生労働省科学研究班の報告では、

  • 「中隔子宮」では、手術を行ったほうが手術なしでの経過観察よりも妊娠成功率が高い
  • 「双角子宮」では、手術を行っても経過観察と変わらない

とあります。しかし、子宮形成術が妊娠成功率や出産成功率の引き上げにどの程度有効性があるかはまだ結論が出ていません。


低用量アスピリン療法

抗リン脂質抗体症候群と診断された人に対して有効な治療であり、胎盤血栓ができるのを防ぐために行われます。


アスピリン(バファリン81、バイアスピリン)を少量(40mgから100mg/日)服用すると、効果があることが分かってきましたが、投与の有無や量、服用期間については医師の指示に従う必要があります。尚、抗リン脂質抗体に対するアスピリンの保険適用はありません。


また、抗リン脂質抗体症候群と診断された場合以外でも、流産の既往に対して広くこの治療を行っている施設があるようですが、十分な根拠はありません


ヘパリン療法

自己注射

ヘパリンとは、低用量アスピリンと併用することで高い効果を得られる薬です。アスピリンが使えない時には単独で使うこともあります。


通常、1日2回自己注射を行います。副作用には、出血や血小板減少症、注射部位の皮膚硬化などが挙げられます。


抗リン脂質抗体症候群合併妊娠に対しては、保険適用があります。


漢方療法

漢方は、妊娠継続に効果があるケースもあるようですが、効果が保証されているものではありませんのでご注意ください。以下は、代表的な婦人科系の漢方です。


  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
    血液の循環を活性化するなどの効用がある当帰や芍薬を含む6種類の生薬の組み合わせでできています。血流を良くし、体を温める効果があり、女性特有の様々な症状に広く用いられています。
  • 当帰散(とうきさん)
    当帰や芍薬などが主成分です。血流を良くし、貧血を改善する効果があります。
  • 柴苓湯(さいれいとう)
    柴胡や黄ごん、甘草などの生薬からなります。血栓ができにくくなる効果があるため、抗リン脂質抗体価が高い不育症の治療に用いられています。

まとめ

1回の流産で、不育症や着床障害のリスク因子を検査する必要はなく、2回、3回と続いたときに初めて検査をすすめられるのが一般的です。しかし、出産時期の高齢化もあり、焦りや不安を感じてしまう人にとっては、検査によってリスク因子をもっていないことが判明すれば、その結果が今後の妊活の支えになるかもしれません。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


関連するみんなのQ&A

『不育症』に関するみんなの疑問や体験談はコチラ!