【医師監修】出生前診断とは?検査の方法や費用、メリットと問題点について

更新日:2017/03/07

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出生前診断とは、赤ちゃんにダウン症などの染色体異常や、その他の先天異常があるかどうかを出生前に調べる検査です。ここでは、自分が受けるかどうか判断するうえでも知っておきたいメリットや問題点、検査の詳細などを解説します。

医師と患者

●出生前診断とは
●検査方法
●メリット
●問題点
●パートナー、カウンセラーと相談を


出生前診断とは

出生前診断とは、主に妊娠初期から中期に、先天性の奇形や染色体異常がないかどうかを調べる検査です。しかしながら、出生前診断で分かるのは一部の異常に限られているため、診断を行ったからといって全ての先天性疾患が分かるというわけではありません


検査方法は複数あり、先天性疾患がある確率を数字で表すものから、かなり確実に診断できるものまであります。それぞれの検査にはリスクもあるため、それらも十分に把握したうえで出生前診断にのぞむようにしましょう。


出生前診断と胎児ドック

近年「胎児ドック」という言葉を掲げている産婦人科も増えてきました。胎児ドックとは、出生前診断と同じといって差し支えありません


胎児ドックという言葉から「赤ちゃんの健康診断」として気軽に受けられるものと感じてしまう人もいるかもしれませんが、実際には出生前診断を受けるのと同じだということを念頭においておきましょう。


出生前診断に反対の病院も

現在、医療機関における出生前診断の説明及び施行については義務化されていません。病院や医師の中には、出生前診断について否定的な考えを持っている人もいます。そのような病院や医師のもとで妊婦健診を受けている場合、出生前診断について十分な説明が受けられないことがあります。


出生前診断を希望している人は、健診とは別の病院や施設に行くことで、詳しい説明や診断を受けることができます。


検査方法

染色体異常を対象とした出生前診断には、主に以下の5つの検査方法があります。

検査の種類

スクリーニング検査(3種類)…安全性重視

初期超音波検査

新型出生前診断(NIPT)

母体血清マーカーテスト

実施時期

妊娠11週から13週

妊娠10週以降

妊娠15週前後

分かること

染色体の数の異常など

診断の精度

確率のみ

長所

・安全

・安全

・安全

・すぐに結果が分かる

・血清マーカーと組み合わせると精度向上

・陽性といわれた人の適中率が高い

 

短所

・確定診断できない

・確定診断できない

・検査費用が高い

・確定診断できない

・精度が高くない


検査の種類

確定検査(2種類)…精度重視

絨毛検査

羊水検査

実施時期

妊娠11週から13週

妊娠16週から18週

分かること

染色体の異常の有無

染色体や遺伝子の異常

診断の精度

ほぼ100%

長所

確定診断になる

短所

流産の危険性が0.1%から0.5%

流産の危険性が0.1%から0.3%


上の通り、初期超音波検査、新型出生前診断(NIPT)、血清マーカーは「スクリーニング検査」となります。スクリーニング検査は安全に行えますが、異常がある確率をパーセンテージでしか表すことができず、確定診断はできません


一方、絨毛検査、羊水検査は「確定検査」となりますが、検査をきっかけとした「流産」の危険性をわずかながら伴います


出生前診断では、まずスクリーニング検査を行い、異常がある確率が高いという結果が出た場合、確定診断を受けるために確定検査に進むというのが一般的な流れとなっています。


初期超音波検査(エコー検査)

超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、その名の通り超音波によって赤ちゃんを詳しく調べる検査です。妊婦健診時と同様、超音波を使った検査のため、母体、赤ちゃん共に安全に行うことができます。


一方、超音波検査は、先に述べてきたように「スクリーニング検査」となるため、この段階で異常が発見されたとしても「異常がある可能性」にとどまり、この検査だけでは確定することはできません。また、超音波で詳しく出生前診断を行う場合は熟練した技術と知識が必要となるため、施設によって検査結果にバラつきが出てしまうという欠点があります。


新型出生前診断・母体血胎児染色体検査(NIPT)

注射

NIPTは、妊娠10週前後に母体の血液にわずかに含まれる赤ちゃんのDNAを調べる検査です。通常、「21トリソミー(ダウン症)」「18トリソミー」「13トリソミー」の3種類の染色体異常を調べることができます。


前表に示した通り、他の検査と比べて早い週数の段階で検査ができ、ダウン症の検出率が高いということにおいて優れています。


一方、あくまでもNIPTは臨床研究というスタンスであることから検査費用が高く、予約も取りにくい状況です。また、染色体異常以外の病気が分からないという欠点があります。


母体血清マーカーテスト

母体血清マーカーテストは、妊娠15週から18週頃に母体の血液を調べ、特定のタンパク質を測定することで、赤ちゃんが染色体異常による先天性疾患(ダウン症または18トリソミー)である確率や、神経管閉鎖不全である確率を数字で出す検査です。


この検査もスクリーニング検査のため、確定診断ではありません。また、仮にダウン症である確率が高いと診断が出ても、実際はその1、2%ほどと、精度があまり良くないという欠点があります。


絨毛検査

絨毛検査

絨毛検査とは、妊娠11週から13週に胎盤の一部を直接採取し「絨毛」という細胞を調べることで、染色体の異常の有無を調べる検査です。


直接、胎盤の細胞を調べるため、確定診断を受けることができます。


しかし、非常に低い確率ですが、絨毛検査をきっかけとして流産が起こる危険性があります。また、まれに「胎盤モザイク」といって採取した細胞には染色体の異常がみられていても、実際に赤ちゃんには異常がないという現象が起こることがあります。


羊水検査

羊水検査

羊水検査とは、妊娠16週から18週頃に腹部に注射器を刺して羊水を直接採取し、検査する方法です。


絨毛検査に比べ、胎盤モザイクがないため、羊水検査のほうがより確実に染色体異常を診断できます


一方で、羊水検査を受けたことがきっかけとなり流産してしまう危険性も1%以下という低い確率ですが存在します。


メリット

出生前診断を受ける最大のメリットは、赤ちゃんの病気をある程度、出産前に知ることができるので、「気持ちに少しゆとりを持って妊娠ライフを過ごすことができる」という点です。


近年、高齢出産の割合が増えていますが、それに伴い多くの人が「赤ちゃんに何か障害があったらどうしよう」という不安を抱えています。高齢出産のリスクの一つとして染色体異常の割合が少し増えるということが、世間一般的にも知られるようになり、赤ちゃんに対して不安に感じる方は多くなっています。


出生前診断を受けることで、そういった不安を減らすことができるということは、大きなメリットといえるでしょう。


問題点

出生前診断を受けるにあたっての一番の問題点としては、検査にて「異常がある」と診断された場合、どのように対応するかという点です。すなわちそれは、「このまま妊娠を継続するか」「中絶するか」という選択でもあります。特に、中絶するという選択については、倫理面から議論が続いています。


現在の法律では、中絶は妊娠22週未満までしか認められていないため、仮に羊水検査で染色体異常があると確定診断されたとしても、その後中絶するかどうかを決断するまでにあまり期間がありません。


この決断は親として非常に責任が重く、どちらが良いという判断を付けることは誰にもできません。出生前診断を受けるにあたっては、この問題点について十分に把握し、パートナーとともにどうしていくかを話し合っておく必要があります。


中絶率の現状

日本で新型出生前診断(NIPT)を受けた結果、「染色体に異常がある」と診断された方の96%が中絶を選択しているというデータがあります。


世界に目を向けてみると、出生前診断において異常があると診断された場合、中絶を選ぶ人の割合は約70%から90%ほどで推移していることから、日本では世界に比べると診断後に中絶を選択する人が多くみられるといった見方もあります。しかし、日本と違い、妊婦全員が出生前診断を受ける対象になっている国もあるため、そのような割合になっているといった側面もあるため、一概には言い切れません。


精神的ダメージ

精神的ダメージ

以前は羊水検査が主であった出生前診断ですが、医学の進歩により、現在では血清マーカーなど母体の血液だけである程度のスクリーニングができるようになってきました。それに伴い、問題点やリスクについて十分把握しないまま検査を受けてしまい、リスクが高いといわれてからどうするか深く悩んでしまうというケースが増えてきています。


「妊娠を継続するか」「中絶するか」の選択は精神的なダメージが非常に大きいものです。そのため、出生前診断を受ける際にはこうした精神的なダメージが大きくなる恐れがあるという点もしっかり把握しておくべきでしょう。


赤ちゃん、母体へのリスク

スクリーニング検査では赤ちゃん、母体共にリスクはありませんが、染色体異常があるかどうかを確定診断する羊水検査や絨毛検査では、非常にわずかながらも流産を引き起こすリスクが存在しています。


出生前診断を受けたことによる精神的なダメージの他に、赤ちゃんや母体へのリスクがあるという点もしっかり把握しておきましょう。


パートナー、カウンセラーと相談を

出生前診断は、本来出生後でないと分からないことを事前に知ることができる画期的な検査です。一方で、本来分からないことを事前に知ってしまったが故の悩みなどが生まれてしまっていることも事実であるということを、述べてきました。


出生前診断を受ける場合には、事前にパートナーとしっかり話し合い、診断を受けることによるメリット、そして異常が見つかった場合にどういう結論を出すかといったことまでしっかりと熟考することをおすすめします。


出生前診断を受け付けているクリニックや病院の中には、事前にカウンセリングを受けることのできる施設もあります。一番大切なのは、一人で悩まないことです。ぜひパートナーやカウンセラーなどと相談し、みなさんで結論を出していただければと思います。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


記事監修医師宋美玄先生  

【 監修者 】
 産婦人科医・医学博士
 宋美玄 先生

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