≪医師監修≫乳がんとは?症状、ステージ、治療、再発、検診について

更新日:2017/01/16

乳がんは、今や女性の11人に1人が、生涯の間に発症するといわれています。ここでは、早期発見や適切な対応をとるために、女性なら知っておきたい症状やステージ、治療、再発、検診について解説します。


記事監修医師福田護先生  

【 記事監修 】
聖マリアンナ医科大学
ブレスト&イメージングセンター
院長  福田護 先生


ピンクリボン

●乳がんとは
●症状
●ステージ(病期)と生存率
●治療
●再発
●検診
●まとめ


乳がんとは

乳がんは、乳房の「乳腺」にできる悪性の腫瘍です。


発生当初は目には見えず、時間が経つにつれて「しこり」などの症状が現れます。また、かなり早い段階で、検査では確認できないような小さながん細胞の塊が、血管やリンパ管に入り、全身へと散らばっていくことが多いため、乳がんに対しては「全身の病気」として治療にあたる必要があります


発生する場所

乳房の断面図を見てみましょう。

乳がんが発生する場所

まず、乳汁を分泌する小さな「腺房」が集まってできた「小葉」で形成される組織を「乳腺葉」といいます。各乳腺葉からは「乳管」が1本ずつ出ており、最終的に「主乳管」となって乳頭に到達します。乳頭を中心に15本から20本の乳葉線が放射線状に広がったものが「乳腺」です


乳がんはこの乳腺を構成する乳管の上皮組織に約95%、小葉に約5%の割合で発生するとされています。乳腺が乳房全体に広がっていることを踏まえると、乳がんは乳房のどこにでも発生する可能性があるといえます。


その中でも、どの場所にできやすいのかを示したものが下図となります。

乳がんができやすい場所

乳頭を中心に縦横に分割した場合、脇の下から乳頭にかけての部分(上図のC、C´)が最も乳がんになる割合が高く約45%、次いで鎖骨に近い部分(上図のA)が約23%となっています。


原因

女性ホルモンの変化

乳がんの原因については、まだはっきりとは分かっていませんが、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが、乳がんの発生や成長に影響しています


食生活の欧米化に伴い、日本女性の体格も昔とは変化し、その結果「初潮が早く、閉経が遅い」という人が増えました。加えて、女性の社会進出により、

  • 出産回数が少ない
  • 出産経験がない
  • 授乳期間が短い

といった人も増えています。妊娠中のプロゲステロン(女性ホルモン)の増加や、授乳中のエストロゲンの低下が乳がんのリスクを減らすとされており、その期間が短くなったことが、日本人の乳がん罹患率が高くなった一因と考えられています。


それ以外には、高身長や肥満といった要素も乳がんになるリスクを高くしているといわれています。また、家族に複数の乳がん経験者がいるなどで「遺伝性乳がん」を疑う必要がある場合、一般の人とは違う検診や対処方法が必要となります。


発症する人の割合

乳がんの罹患者数

生涯のうちで乳がんになる女性は、50年前は50人に1人でしたが、現在は11人に1人といわれており、年間約9万人が乳がんと診断されています


年代別に見ていくと、患者の数は30代後半から急激に増加し、40代後半に一つのピークを迎えます。これは言い換えれば、女性が家庭や社会で最も活躍する年代に多いがんだということです。また、近年は60代前半にもう一つのピークが訪れる傾向があります。閉経後の60代から70代の乳がんが多いのは欧米のパターンに似ており、生活様式の欧米化に関連していると考えられています。


症状

胸に手をあてた女性

乳がんの症状として最も多くみられるのが「しこり」です。その後、がんの進行と共に様々な自覚症状が現れてきます。


初期症状

ごく初期の間は自覚症状がほとんどありません。検診ではじめて発見されるといった段階です。

進行してくると、しこり、乳頭分泌などの乳がんの症状が出現してきます。


中期から末期の症状

乳がんがさらに進行すると、しこりをはっきりと認めるようになります。また、脇の下のリンパ節が大きくなったり、乳房の皮膚や乳頭がひきつれたりします。


→症状について詳しくはこちら


再発・転移の症状

乳がんが乳房内に再発すると、初発時と同様、乳房にしこりや腫れなどがみられるようになります。また、乳がんがリンパ節に転移した場合は、大きくなったリンパ節を認めます。リンパ液の流れが悪くなった場合、腕のむくみが出ることもあります。


乳がんは、脳、骨、肺、肝臓など離れた箇所へ転移する可能性もあり、部位ごとに異なる症状が現れます。


→再発・転移の症状について詳しくはこちら


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ステージ(病期)と生存率

乳がんは、しこりの大きさや他の部位への転移の有無などによって、0期からⅣ期の5つのステージで表されます。ステージの数字が小さいほど、進行度が低く、早期発見による治癒率が高くなります。

ステージ

がんの種類 しこりの大きさ リンパ節転移

ステージ0

 

非浸潤癌

問わない

なし

ステージⅠ

 

浸潤癌

(早期癌)

2cm以下

なし

ステージⅡ

 

A期

浸潤癌

(早期癌)

2cm以下

あり

2cmから

5cm

なし

B期

あり

5cm以上

なし

ステージⅢ

 

A期

浸潤癌

(局所進行癌)

問わない

わきの下のリンパ節に転移があり、リンパ節同士の癒着がある

2cm以下

胸骨の内側のリンパ節に転移がある

5cm以上

わきの下または胸骨の内側のリンパ節へ転移がある

B期

しこりの大きさやわきの下のリンパ節への転移に関係なく、しこりが胸壁に固定していたり、皮膚上に現れたりしている

C期

しこりの大きさに関係なく、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移がある

または、鎖骨上下のリンパ節に転移がある

ステージⅣ

 

浸潤癌

(遠隔転移)

しこりやリンパ節の状態に関係なく、肺、肝臓、脳、骨などに遠隔転移している


病期別生存率

乳がんの10年生存率

乳がんの10年生存率は、Ⅰ期で93.7%、Ⅱ期で85.5%、Ⅲ期で54.9%、Ⅳ期では15.9%となっています。全病期を通してだと80.8%と非常に高い数字です。


発見が早いほど、治療の選択肢も幅が広がり、治療後のQuality Of Life(QOL、生活の質)の向上を得ることができます。


→ステージについて詳しくはこちら


治療

乳がんの治療法を考えるときに大きな判断材料となるのが「ステージ」です。それに加え、現在、治療法の選択の際に重視されているのが「サブタイプ」と呼ばれるがんの性質や性格に基づく分類です。


ステージとサブタイプ分類の組み合わせにより、患者さん一人ひとりにとって最も効果的な治療法(手術療法、放射線療法、薬物療法)を選択できるようになってきました


手術療法(外科療法)

乳がんの手術療法では、乳房内のがんの広がりによって、乳房を「温存」するか「全摘」するかを決定します。また、リンパ節を切除(郭清)するか、乳房の全摘と同時に乳房再建をするかによって、術後経過が変わります。


一般的には手術日の1、2日前に入院し、

  • 乳房温存術後は3日程度
  • 乳房切除術後は7日から10日程度

で退院となります。退院後はリハビリと並行しながら、家事や仕事を再開しても構いません。


放射線療法

乳房温存手術に対する場合、手術から2か月以内に、温存した乳房に対して行われます。


薬物療法

薬

乳がんの治療に用いられる薬物療法は、大きく分けて、ホルモン療法、化学療法(抗がん剤治療)、分子標的療法の3種類になります。薬物療法を選択する場合は、目的、治療効果、副作用とその対策などについて医師と十分な話し合いをすることが大切です。


→治療について詳しくはこちら


再発

乳がんは他の部位のがんに比べ、進行がゆっくりとしたがんであるといわれています。再発の約70%が5年以内に起こるとされていますが、10年以上経ってから再発する場合もあります


再発した時に少しでも早い段階で発見ができるよう、自己検診をすると共に、定期的に外来での経過観察を受けることが重要です。


→再発・転移について詳しくはこちら


検診

乳がんの検診には視触診の他に、乳房専用のレントゲンである「マンモグラフィ」と、乳房にゼリーを塗り、皮膚の上から超音波をあて反射してくるエコーを画像化する「超音波検査(エコー検査)」が一般的です。


→検診について詳しくはこちら


まとめ

乳がんの治療法は大きく進歩し続けています。また、治療法を選択するための検査、診断の精度も飛躍的に高くなっています。


乳がんになってしまっても、主治医の先生と相談しながら最善の治療法を見つけていくのが良いでしょう。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


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