≪医師監修≫乳がんステージ1の再発、転移、生存率は?治療はどう進む?

更新日:2018/01/10

乳がんは、日本の女性に最も多いがんです。最近のデータによると、1年間に約6万人が乳がんと診断されています。一方で、乳がんは治りやすいがんでもあり、10年生存率は90%を超えています。ここではステージ1に焦点を当て、患者さんの状態や早期発見のポイント、治療の実際などについて解説します。


記事監修医師上野貴史先生  

【 記事監修 】
 板橋中央総合病院 乳腺外科医長
 上野貴史 先生


●乳がんのステージ1とはどんな状態?
●どんな症状がでるの?
●10年生存率はどれくらい?
●転移はするの?転移しやすい場所はどこ?
●再発率はどれくらい?
●ステージ1の標準治療とは?
●手術後に全身治療(抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的治療)は受けるべき?
●まとめ


乳がんのステージ1とはどんな状態?

ステージ(病期)は、がんの進行の程度を示すもので、UICC(国際対がん連合)によって定義されています。乳がんでは、①しこりの大きさ、②リンパ節への転移があるか、③骨や肺など離れた臓器への転移があるかによって決まります。ステージ1は早期のがんで、「がんの大きさが2cm以下で、リンパ節や遠隔臓器に転移していない」ものをいいます。


病期分類は臨床病期といって、原則、治療前の臨床診断で決定するのですが、手術後の検査結果をもとにつける病理学的病期もあります。臨床病期はステージ1でも、手術でリンパ節に転移が見つかった場合には、病理学的ステージ2となることもあるわけです。そのため、どちらの病期を意味しているかをはっきりさせておくことが必要です。病理学的ステージ1の方が、臨床病期1よりも治癒しやすいことになります。


どんな症状がでるの?

乳がんの代表的な症状は、乳房の「しこり」です。乳がんの多くは、このしこりが発見のきっかけとなっています。しこりは、痛みはありませんが、一般的には硬く、ゴツゴツしており、あまり動かないのが特徴です。


がんが1cmくらいの大きさになると、しこりが手に触れるようになります。しこりがあるからといって乳がんとは限りませんが、気になるしこりを見つけたら、専門施設で検査を受けることをお勧めします。また、40歳以上の方では、乳がん検診を活用して乳がんの早期発見に努めることにより、乳がん死亡リスクが下がることが証明されています。


10年生存率はどれくらい?

乳がんは治りやすいがんの1つです。特に、早期がんであるステージ1の場合は、良好な成績が得られています。


全国がんセンターに加わる協議会に加わる16のがん専門医療施設が、1999年から2002年に治療を受けた患者さんを調べたデータ(2016年)によると、ステージ1の5年生存率は99.9%、10年生存率は93.5%にのぼっています。しかし、ステージが進むにつれて、生存率も完治率も低下します。ちなみに、全国データによるステージ2、3、4の5年生存率は、それぞれ95.4%、80.3%、33.0%です。


生存率で注意したいのは、たとえ乳がんが再発して治癒不能となっていても、10年の時点で、生存していれば、生存例としてカウントすることです。乳がんは再発しても治療により4、5年生存することも多いので、乳がんの治癒率は10年生存率よりも低くなります。

病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
7,029 99.9
6,923 95.4
1,710 80.3
699 33.0
全症例 16,466 93.0

出典:全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2016年2月集計)による


転移はするの?転移しやすい場所はどこ?

ステージ1でも、がん細胞は微小血管やリンパ管に浸潤することが可能であり、遠隔転移巣を形成することもあります。


最も多いのは、骨転移です。これはステージ1に限らず、乳がんの特徴です。また、肺、肝臓、脳などへの転移も起こしやすいです。


再発率はどれくらい?

手術で、乳がんをきれいに取り除いたとしても再発することがあります。これは、目に見えないごく小さながん細胞が、からだのどこに潜んでいて、それが芽を出し、成長するためです。ステージ1でも15%から20%程度の患者さんに再発がみられます


再発の多くは2、3年以内に起こりますが、乳がんは進行が遅いため、手術してから5年から10年後、まれに20年近く経ってから再発するケースもあります。


ステージ1の標準治療とは?

乳がんの治療法には、手術療法、放射線療法、抗がん剤療法、ホルモン療法、分子標的剤療法があり、これらを単独あるいは組み合わせて行います。どのステージでもこの基本的な考え方は同じです。


手術療法では、乳房を部分的に切除する「乳房温存術」か、乳房全てを切除する「乳房切断術」が選択されます。ステージ1ではしこりが2cm以下と小さいので温存術が可能なことが多いのですが、しこりが乳頭近くの中心部にあったり、顕微鏡的な乳管内進展が広くみられるタイプでは、乳房切除術が必要となる場合もあります。乳房温存術には、取り残した可能性のあるがん細胞を死滅させるため、乳房に放射線を照射するのが原則です。


手術後に全身治療(抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的治療)は受けるべき?

かつては、リンパ節転移のないステージ1は、再発リスクが低いとして、抗がん剤治療による利益と副作用のバランスから、抗がん剤治療を行わないケースもありました。しかし最近では、乳がんのサブタイプに応じて、全身治療を施行することが標準治療となっています。


ルミナルタイプの場合にはホルモン療法、トリプルネガティブタイプでは抗がん剤治療、HER2陽性タイプでは分子標的治療+抗がん剤治療を行います。ルミナルタイプでも抗がん剤を併用した方がよいケースもあります。これらは再発リスクを下げるために行います。もともとステージ1では再発リスクはあまり高くないのですが(手術単独でも約70%は治癒可能)、再発リスクは誰にでもあるため、ほぼ全員に補助全身治療が施行されます


まとめ

乳がんは治りやすいがんです。特にステージ1の段階で見つかれば、80%以上の方が完治します。自覚症状に乏しく、気づきにくいのが難点ですが、乳房にしこりを見つけたら、すぐ医療機関で検査を受けるようにして下さい。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


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