≪医師監修≫乳がんが再発・転移した際の症状、治療、生存率について

更新日:2017/01/16

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乳がんは、骨や肺など様々な場所に転移する可能性があります。ここでは再発・転移の時期や確率、症状、治療方法、生存率などを詳しく解説します。


記事監修医師福田護先生  

【 記事監修 】
聖マリアンナ医科大学
ブレスト&イメージングセンター
院長  福田護 先生


胸に手をあてた女性

●再発・転移とは
●再発・転移しやすい部位と症状
●治療方法の選び方
●再発・転移した場合の生存率
●再発・転移を予防するために
●まとめ


再発・転移とは

手術療法や全身療法の結果、体中のがんが一度は見えなくなったのに、期間を置いて体のどこかに再びがんがみられた場合を「再発」といいます。

治療を行った側の乳房や周辺の組織に再発することを「局所再発」といいます。また、乳房から離れた骨、肺、肝臓などの器官や臓器にがんが出現することを「遠隔転移」といいます。


再発・転移する時期

乳がんの特徴の一つとして「がんの進行が遅い」ことが挙げられます。通常、再発の多くは手術後2、3年ほどでみられますが、乳がんの場合は進行が遅いことから、5年から10年、まれに20年くらい後になってから起こることもあります

再発した場合は、全身にがんが広がっている「全身病」となっていると考え、手術は行わず、化学療法やホルモン療法、分子標的療法などの薬物療法が行われます


再発・転移する確率

乳がんと告知された段階ですでに遠隔転移が存在あるいは潜在する割合は、20%から30%程度と考えられています。そのため、乳がん患者の20%は10年の間に亡くなるという事実があります。


再発・転移しやすい部位と症状

乳がんが再発・転移しやすい部位

乳がんは治療した側の乳房に再発することもあれば、反対側の乳房、脳、肺、リンパ節、肝臓、骨など様々な場所に転移することもあります。乳房で発生したがんはどこの臓器に転移しても乳がんの性質を持っているので肺に転移したがんでも「肺がん」とはいわず「乳がんの転移」として扱われます


乳房

まれに、がんを切除した反対側の乳房に転移が起きることがあります。

症状は通常の乳がんと同様、しこりや腫れです。


リンパ節

乳がんの転移として最も多くみられるのが、リンパ節への転移です。

脇の下にある「腋窩(えきか)リンパ節」に転移すると、リンパ節が大きくなります。転移が進むと、脇の下にしこりを感じる、腕がむくむ、しびれが出るなどの症状が出ます。


脳のレントゲン

脳は、人が生きていくうえで「司令塔」の役目を果たしています。 そのため、転移した脳の場所に応じて様々な症状が出現します。

比較的多くみられる症状は頭痛や吐き気ですが、特に運動をつかさどる部位に転移した場合には麻痺や感覚の障害が起こり、言葉をつかさどる部位に転移した場合には、言語障害が起こります。


骨へ転移した場合、転移した部位の痛みが起きやすくなります。また、症状が進行すると骨自体がもろくなり、骨折してしまうこともあります。

転移したがんは骨の周囲の神経も圧迫するため、痛みだけでなくしびれとして症状が出ることもあります。


肺、胸膜

咳

肺へ転移した場合、咳や息切れが起きやすくなる他、痰が多く出るようになります。 また、胸膜(肺と胸郭の内側を覆う膜)に転移があると、胸水が出現します。

肺、胸膜への転移が進むと、呼吸困難が起こります。


肝臓

肝臓は、乳がんに限らずほぼ全てのがんが転移する可能性のある臓器です。

肝臓は「静かなる臓器」といわれており、ある程度がん進行するまで自覚症状がないまま経過するのが一般的です。進行すると症状として、食欲低下や体のだるさ、お腹の腫れ、黄疸(顔や手、白目部分が黄色く染まる)などが現れます。


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治療方法の選び方

温存した乳房内に乳がんが「局所再発」した場合は、再発部位を切除します。そのうえで、前回治療時に放射線治療を受けていなかった場合は放射線治療を行います。

また、局所再発が出現した時は、すでに全身にがん細胞が散らばっている可能性が高いため、全身への効果が期待できる薬物療法が行われることとなります。

全身療法の選び方

再発・転移した際の薬物療法(全身療法)は、原発(初発)乳がんの手術前後に行う薬物療法と同様に、サブタイプ分類に沿って選択されます。


  • 一般的に5年以上経過して再発・転移したような乳がんの場合は、ホルモン受容体陽性(ホルモン剤が効くタイプ)であることが多く、ホルモン療法が可能である場合が多数を占めます。
  • すでに症状があるような内臓転移やホルモン受容体陰性(ホルモン剤が効かないタイプ)の場合には、化学療法や分子標的療法が選択されます。

ホルモン療法でも化学療法でも、一定の効果がみられるまでは同じ薬を使った治療を続け、「効果が落ちてきた」と判断された場合には次の薬を使った治療へと移ります。また、他臓器に転移したがんには、全身療法に加えて、各臓器の痛みなどの症状を緩和するための放射線治療や薬物療法なども行われます

→治療について詳しくはこちら


再発・転移した場合の生存率

ピンクリボン

再発・転移した際に、一番気になるのが再発後の「生存率」ではないでしょうか。乳がんの場合、再発後の5年生存率は20%から30%、10年生存率は10%以下といわれています

しかし、この生存率について、まず念頭におかなくてはいけないのは、「現在出ている生存率はあくまで5年前、10年前の医療水準での治療を受けた人のものであり、現在奨励されている治療を受けていないこともある」ということです。

また、一口に再発といっても治療方法や発症した年齢、再発するまでにかかった年月は人それぞれ違い、発表されているものはあくまでも平均値となっていますので、単純に比較はできません。よって、たとえ生存率が低い数値であったとしても、医学の進歩によって今後改善されていく可能性も十分残されています。

2011年に開かれた日本乳癌学会においても、「1990年代以降の新薬の登場により、再発後の生存期間は徐々に延長してきたのも事実」とされています。そのため「生存率」は参考までにとどめておき、ぜひ「治療」ひいては「乳がんとの上手な共存」へ意識を向けられることをおすすめします。


再発・転移を予防するために

現在、残念ながら「これをやれば確実に再発・転移を予防できる」というものはありません。しかし、乳がんは女性ホルモンが深く関係していることが多いため、「ホルモンバランスを乱れさせるような行為」はそのまま「再発・転移を引き起こす危険性がある行為」であるということがいえます。

ホルモンバランスの乱れを招きやすい要因として肥満、飲酒などが挙げられます。


肥満

食事

乳がんの発症リスクとして挙げられているのが「肥満」です。肥満はホルモンバランスを乱れさせるということが、医学的研究で明らかになっており、発症はもちろんのこと、再発・転移のリスクも上がると考えられています。

肥満を防止するためには、適度な運動と共に、栄養バランスのとれた食事を3食しっかりとることが何より大切です。尚、「がんに効く」と呼ばれる食品も多々ありますが、その食品ばかりを食べていると、栄養バランスが崩れてしまいかねませんので、あくまでも「食事の一部に取り込む」程度にしておくと良いでしょう。


飲酒

乳がんの発症リスクを上げる要因のもう一つは、「アルコール」です。アルコールの摂取によって、女性ホルモンであるエストロゲンが影響を受けるとされています。

再発・転移を防止するためにも、過度の飲酒は控えることをおすすめします


まとめ

乳がんの治療を終えられた人の中には「再発・転移してしまうかもしれない」と不安な気持ちを抱えている人が多くいると思います。しかし、それがストレスになってしまうと病気には逆効果です。

まずは、「治療により目に見えるがんはもうなくなった」と前向きに考え、その状態をキープするために生活習慣の改善ができると良いですね。もちろん定期健診で経過観察をすることもとても重要です。また、再発・転移の治療中の人は、緩和ケアなどを上手く取り入れ、無理をせずにがんと付き合っていくことが大事です。

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。


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