子宮体がんとは?原因、症状、ステージ、治療、妊娠への影響について

更新日:2017/01/19

子宮体がん(子宮内膜がん)は、子宮の体部にできるがんで40代から多く発生しはじめ、ピークは50代から60代になります。同じ子宮がんでも入口付近に発生する子宮頸がんとは性質が異なります。ここでは、子宮体がんの原因や症状、ステージ、治療方法、妊娠への影響などについて解説します。

子宮体がん

●子宮体がんとは
●症状
●ステージ分類(進行期分類)
●治療方法
●検査
●妊娠への影響は


子宮体がんとは

子宮体がんは、子宮の体部にできるがんです。そのほとんどは子宮の内膜に発生し「内膜がん」と呼ばれます

主に卵巣でつくられるエストロゲン(女性ホルモン)は、月経(生理)の終わりから排卵期にかけて分泌量が増え、子宮内膜を厚くします。この子宮内膜は妊娠しなければ不要となり、剥がれ落ちて経血になります。しかし、何らかの異常でエストロゲンが長期にわたり過剰に分泌されると、分厚くなった内膜で「子宮内膜異型増殖症」という異常が起き、その約20%が子宮体がんになるとされています。

子宮体がんの中には、エストロゲンに関係なく発生するタイプもあります。

原因

子宮体がんの主な原因はエストロゲンが過剰に分泌されることです。

女性ホルモンが大きく関係しているため「月経不順」や「出産経験のない人」などが子宮体がんになりやすいとされています。また、エストロゲンは脂肪細胞でもつくられるので「肥満」も子宮体がんのリスクを高めると考えられています。

他にも、遺伝が原因となる場合もあります。


患者数

子宮がん全体の約50%を占める子宮体がんは、閉経前後に発症することが多いので、40代後半あたりから患者数の増加が目立ち、50代から60代が最多となっています。ただし、20代や30代の若い人が発症するケースもあります。


【 子宮体がんと診断された人 】

  • 2003年…7,430人
  • 2012年…13,606人

(国立がん研究センターがん対策情報センターの統計より)
この10年間で、患者数が倍近くに増えていることが分かります。

 

症状

腹痛

子宮体がんの症状として最も多くみられるのが「不正出血」です。不正出血とは月経以外の出血や、閉経しているにも関わらず出血があることを指します。

その後、がんが進行すると共に様々な自覚症状が現れてきます。

 

初期症状

不正出血は子宮体がんの代表的な初期症状です。

子宮体がんは閉経後の不正出血で発見されることが多いのですが、閉経前にストレスや女性ホルモンの乱れなどによって月経不順が起きていたり、閉経前後だったりすると不正出血を見逃してしまうことがあります。

また「スポッティング」と呼ばれる少量の出血や、血の混ざったおりものも不正出血の一つとして注意しておきたい症状です。

 

進行がんの症状

がんが進行すると、おりものに膿や血が混ざる異常や、下腹部を中心とする腹痛や腹部膨満感(お腹の張り)が現れるとされています。他にも、排尿痛や排尿困難、性交痛、腰痛、足のむくみなどが生じます。

 

再発・転移の症状

子宮体がんは、腹部や骨盤内での再発や、リンパ節への転移が起こりやすいとされていますが、症状は現れないことが多いです。しかし、癌性腹膜炎を発症し腹水が溜まると、腹部膨満感や腸閉塞、吐き気、嘔吐などの症状が出現することがあります。

また、肺、脳、肝臓など離れた箇所へ転移する可能性もあり、部位ごとに異なる症状が現れます。

 

ステージ分類(進行期分類)

子宮体がんの進行期分類

子宮体がんのステージは、Ⅰ期からⅣ期に分けられます。以前は、子宮内膜異型増殖症(がんになる前の病変)を発症している状態をステージ0期としていましたが、現在は0期という分類は用いられていません。

 

Ⅰ期

Ⅰ期は最も患者が多いステージです。

がんが子宮内膜にとどまっている状態で、子宮内膜から周りの子宮筋層にどの程度がんが入り込んでいるか(筋層浸潤の度合い)によって、ⅠA期とⅠB期に分けられます。

 

Ⅱ期

がんが子宮頸部(子宮の入り口部分)に広がった状態です。

 

Ⅲ期

がんが子宮外に広がった状態です。

卵巣に転移がみられる状態をⅢA期、膣壁に転移がみられる状態をⅢB期、傍大動脈リンパ節や骨盤リンパ節に転移した状態をⅢC期と分けます。

 

Ⅳ期

がんが骨盤まで広がっている状態です。

膀胱や直腸に転移がみられる状態をⅣA期、腹腔内や鼠径リンパ節、肝臓、肺、骨などに遠隔転移がみられる状態をⅣB期と分けます。

 

治療方法

子宮体部は検査による診断が難しく、手術前の検査はあくまでもステージを推定するにとどまり、治療方針を全て確定することはできません。子宮体がんと診断されたらまず手術を行い、患部を切除するなどして得た標本の評価結果をもとにステージを分類し直し、術後の治療法を決めるという方法がとられます。

子宮体がんは基本的に以下の図のような治療が行われます。

子宮体がん治療方法

手術療法(外科療法)

手術

子宮体がんの治療法は、どのステージでも手術療法が優先的に検討されますが、がんの広がりによって手術の方式が変わってきます。

手術は開腹して行われる「腹式手術」が一般的です。最近では、体への負担が少ない「腹腔鏡下手術」を選択することもできますが、対象となるステージや手術を受けられる施設に制限があります。

 

単純子宮全摘出術

単純子宮全摘出術

単純子宮全摘出術とは、子宮全体を摘出する手術方法です。子宮体がんでは、卵巣へ転移する可能性が高いため、基本的に卵巣や卵管を同時に摘出する「両側付属器摘出術」をあわせて行います

 

【 対象 】
主に、がんの広がりが子宮体部に限定されるⅠ期の子宮体がんが適応となります。

 

【 治療 】
手術は全身麻酔で行われ1、2時間の手術時間を要します。手術後の経過が順調であれば、入院後1週間から10日ほどで退院できます。

手術後は病状や治療後の経過をみながら数か月に一度の通院をすることになり、その後も定期的な経過観察で再発の有無をチェックします。

 

【 費用 】
25万円から30万円程度(3割負担の保険適用時)

 

【 合併症・後遺症 】
単純子宮全摘出術で、尿管や尿道の神経を傷つけることはほとんどありませんが、子宮を全摘出するため妊娠はできなくなります。

卵巣もあわせて摘出した場合は、女性ホルモンの分泌がなくなるため、閉経前の人は卵巣欠落症状という更年期と同じ症状や、骨粗しょう症、脂質異常症などが起こりやすくなります。

 

準広汎子宮全摘出術

準広汎子宮全摘出術

準広汎子宮全摘出術とは、子宮に加え、周辺部位や膣上部を摘出する手術方法です。がんは、リンパ節に転移しやすいため、がん周辺のリンパ節を取り除く「リンパ節郭清」をあわせて行う場合があります。リンパ節の転移を術前の画像評価で予測することは難しいため、摘出したリンパ節の転移の有無により再発のリスクを評価し、術後の追加治療を決定します。

 

【 対象 】
主にⅠ期、Ⅱ期の子宮体がんが適応となります。

 

【 治療 】
手術は全身麻酔で行われ、2時間から4時間の手術時間を要します。手術後の経過が順調であれば、入院後2、3週間ほどで退院できます。

手術後は病状や治療後の経過をみながら1か月から3か月に一度の通院をすることになり、その後も定期的な経過観察で再発の有無をチェックします。

 

【 費用 】
30万円から35万円程度(3割負担の保険適用時)

 

【 合併症・後遺症 】
単純子宮全摘出術と大きな違いはありませんが、子宮周囲の組織を切除するため、まれに排尿障害が起こる場合があります。

リンパ節切除を行った場合は、リンパ嚢胞(リンパ管が異常に膨らみ袋状になったもの)や下肢のリンパ浮腫などが起こることがあります。

 

広汎子宮全摘出術

広汎子宮全摘出術

広汎子宮全摘出術とは、子宮全体だけでなく、子宮を支えている靭帯、膣壁などの周辺組織を広く切除する手術方法です。さらに、骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節(大動脈周囲リンパ節)の切除をあわせて行う場合があります

 

【 対象 】
主に、Ⅱ期の子宮体がんが適応となります。

 

【 治療 】
手術は全身麻酔で行われ、3時間から6時間の手術時間を要します。手術後の経過が順調であれば、入院後3、4週間ほどで退院できます。

 

【 治療 】
30万円から40万円程度(3割負担の保険適用時)

 

【 合併症・後遺症 】
骨盤内を広く切除するため、感染症、尿管や膀胱の損傷、排尿障害、排便障害、性交障害などの後遺症が起こる可能性があります。

リンパ節切除を行った場合は、リンパ嚢胞や下肢の浮腫、感染症などが起こることがあります。また、傍大動脈リンパ節の切除を行った場合は、リンパ嚢胞や下肢のリンパ浮腫の他に、腸閉塞が起こりやすいとされています。

 

放射線療法

放射線療法

放射線療法とは、高用量X線や高エネルギー線を用いて、がん細胞の増殖を抑え破壊させる「局所療法」です。子宮体がんでは、外部から放射線をあてる「外部照射」を行うことがあります。

 

【 対象 】
子宮体がんに対しては、放射線治療の効果はあまり期待できないと考えられています

しかし、高齢であったり、重篤な疾患にかかっていたりして、手術療法がとれないときは、放射線治療が対象となります。また、手術が不可能な進行がんや再発した子宮体がんには、がんの進行抑止や症状を緩和することを主な目的とした放射線治療が行われます。他にも、手術後に切除した部分の再発予防のために、放射線治療が行われることがあります。

 

【 照射期間と回数 】
照射する単位や部位はがんの進行状態によって異なります。ただし、子宮体がんでは放射線治療の標準的な治療指針が確立していないため、明確な基準がないのが現状です。

 

【 副作用 】
照射される範囲では、がん細胞だけでなく正常な細胞も放射線による影響を受けるため、放射線治療後は様々な副作用が起こる可能性があります。

照射直後から治療中に起こる副作用には、吐き気や嘔吐、下痢、全身倦怠感、貧血、照射部位の皮膚炎や色素沈着などが挙げられます。治療後しばらくしてから起こる晩期の副作用には、直腸炎や小腸障害、放射線膀胱炎などがあります。

また、骨盤リンパ郭清を合わせて行った手術後に、外部照射を行うと副作用が増加するため十分な注意が必要です。

 

化学療法(抗がん剤治療)

化学療法とは、抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑え破壊させる「全身療法」です。

 

【 対象 】
子宮体がんの抗がん剤による標準治療法は、十分に確立されていないので化学療法が手術療法よりも優先して検討されることはありません

化学療法が選択されるのは、手術で完全に摘出することができなかった進行がんや、術後の再発した子宮体がんに対してです。他にも、手術後に再発予防のために、化学療法が行われることもあります。

 

【 副作用 】
化学療法による副作用は薬剤にもよりますが、脱毛や倦怠感、骨髄抑制(血液をつくる働きが低下し白血球や血小板などが減少すること)、吐き気、神経症状などがあります。

 

主な抗がん剤の種類

子宮体がんの化学療法として、以下の薬剤が良く用いられます。

一般名

略語

商品名

シスプラチン

CDDP

シスプラチン
ランダ
ブリプラチン
シスプラメルク
プラトシン

カルボプラチン

CBDCA

パラプラチン
カルボプラチン

アドリアマイシン
(ドキソルビシン)

ADM
ADR

アドリアシン

パクリタキセル

PTX

タキソール
パクリタキセル

ドセタキセル

DTX
TXT

タキソテール

 

多剤併用療法

化学療法は、抗がん剤を単独で使うより、数種類の薬剤を組み合わせて行う「多剤併用療法」の方が効果は高いとされています。

子宮体がんでは、以下のような多剤併用療法が行われています。

治療法

治療日
投与法

1コースあたりの期間

1コースあたりの費用

AP療法(入院)

アドリアマイシン

1日目
(注射)

3週間

2~3万円

シスプラチン

TC療法(外来可)

パクリタキセル

1日目
(注射)

3週間

3~4万円

カルボプラチン

DP療法(入院)

ドセタキセル

1日目
(注射)

3週間

約3万円

シスプラチン

※費用は3割負担の保険適用時

黄体ホルモン療法

薬

黄体ホルモン療法とは、黄体ホルモン剤を用いて、がん細胞を抑える治療です。子宮内膜増殖症や初期の限られたがん、再発したがんに対して「MPA(ヒスロンH)」という黄体ホルモン製剤を使用することがあります。

 

【 対象 】
黄体ホルモン剤の効果は、適性を持っている患者に限られています

 

【 副作用 】
黄体ホルモン療法の特徴は、副作用が軽いことですが、気をつけたいのが血栓症です。脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす場合があるため、肥満の人など血栓症を起こすリスクが高い人は、医師の判断により黄体ホルモン療法は行いません

 

検査

医師と患者

子宮体がんは、子宮頸がんのように定期検診で発見することは難しいとされています。そのため、不正出血など子宮体がんが疑われる症状があるときは、検査を行って明らかにします。

 

手術前の検査

子宮体がんの検査では、まずスクリーニング検査として「内膜細胞診」が行われます。内膜細胞診の結果が擬陽性(陰性と陽性の中間)もしくは陽性の場合は、子宮内膜異型増殖症と同時に子宮体がんを発症している疑いがあるので、確定診断をするために「内膜組織診」を行います。また、補助診断として経膣超音波検査や、子宮鏡検査、MRIなどが行われる場合もあります。

子宮体がんと確定診断された場合、ステージの推定や治療法の検討をするためにMRIやCTなどが行われます。

 

手術による検査

子宮体がんの初回の治療は、特別な理由がない限り手術が選択されます。手術前の検査は、ステージを推定するにとどまるため、手術によって得た標本をもとに病理組織検査を行い「ステージ分類」の決定や「再発リスク」の評価がされます

再発リスクの結果が「低リスク群」であれば、術後は経過観察となり、結果が「中から高リスク群」であれば、化学療法や放射線治療などの治療が追加されます。

 

経過観察中の検査

子宮体がんは、5年を過ぎても再発することがあるため、治療後5年以上の経過観察期間が設定されることが多くあります

経過観察中の検査では、内診や腟断端細胞診(子宮摘出後の細胞診)、経腟超音波検査、腫瘍マーカー測定、胸部X線、CTなどを行い再発の有無を確認します。

 

妊娠への影響は

医師と患者

子宮体がんを発症して手術療法を行うと、基本的に子宮は残さないため、妊娠はできなくなります

妊娠できる望みを残す方法として、ごく早期の子宮体がんで妊娠に適した年齢の人であれば、手術をせず黄体ホルモン療法のみを選択できることがあります。ただし、黄体ホルモン療法の効果が出なかったり、治療中にがんが進行や再発したりしたときは、子宮の全摘出手術に切り替えることになります。

妊娠を強く希望する場合は、経験が豊富な医療機関で慎重に治療法を決めることが大切です。

 

性生活への影響

妊娠を希望しない場合でも、性生活への影響は大きいといえます。

子宮と卵巣を取り除いても性交渉は可能ですが、エストロゲンの低下が性交障害を招き、膣の乾燥や性交痛に悩まされたり、精神的な不安や不満が増したりと、生活の質(QOL)を左右する大きな問題になることがあります。

がんの発症以降、QOLをいかに改善するかが大切です。

 

※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。

 

記事監修医師宋美玄先生  

【 監修者 】
 産婦人科医・医学博士
 宋美玄 先生

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