≪医師監修≫子宮体がんステージごとの治療とは?費用、副作用、妊娠への影響について

更新日:2017/09/19

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子宮体がんの治療法は、どのステージでも手術療法が優先的に検討されますが、がんの広がりによって手術の方式が変わります。また、放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)黄体ホルモン療法が選択される場合もあります。ここでは治療の費用や期間、副作用、妊娠への影響について解説します。


記事監修医師宋美玄先生  

【 記事監修 】
 産婦人科医・医学博士
 宋美玄 先生


●ステージ分類(進行期分類)
●治療方法の選び方
●手術療法(外科療法)
●放射線療法
●化学療法(抗がん剤治療)
●黄体ホルモン療法
●妊娠への影響は

ステージ分類(進行期分類)

子宮体がんの進行期分類

子宮体がんのステージは、Ⅰ期からⅣ期に分けられます


Ⅰ期

Ⅰ期は最も患者が多いステージです。

がんが子宮内膜にとどまっている状態で、子宮内膜から周りの子宮筋層にどの程度がんが入り込んでいるか(筋層浸潤の度合い)によって、ⅠA期とⅠB期に分けられます。


Ⅱ期

がんが子宮頸部(子宮の入り口部分)に広がった状態です。


Ⅲ期

がんが子宮外に広がった状態です。

卵巣に転移がみられる状態をⅢA期、膣壁に転移がみられる状態をⅢB期、傍大動脈リンパ節や骨盤リンパ節に転移した状態をⅢC期と分けます。


Ⅳ期

がんが骨盤まで広がっている状態です。

膀胱や直腸に転移がみられる状態をⅣA期、腹腔内や鼠径リンパ節、肝臓、肺、骨などに遠隔転移がみられる状態をⅣB期と分けます。


治療方法の選び方

子宮体部は検査による診断が難しく、手術前の検査はあくまでもステージを推定するにとどまり、治療方針を全て確定することはできません。子宮体がんと診断されたらまず手術を行い、患部を切除するなどして得た標本の評価結果をもとにステージを分類し直し、術後の治療法を決めるという方法がとられます。

子宮体がんは基本的に以下の図のような治療が行われます。

子宮体がん治療方法


手術療法(外科療法)

子宮体がんの治療法は、どのステージでも手術療法が優先的に検討されますが、がんの広がりによって手術の方式が変わってきます。

手術は開腹して行われる「腹式手術」が一般的です。最近では、体への負担が少ない「腹腔鏡下手術」を選択することもできますが、対象となるステージや手術を受けられる施設に制限があります。


単純子宮全摘出術

単純子宮全摘出術

単純子宮全摘出術とは、子宮全体を摘出する手術方法です。子宮体がんでは、卵巣へ転移する可能性が高いため、基本的に卵巣や卵管を同時に摘出する「両側付属器摘出術」をあわせて行います。


【 対象 】
主に、がんの広がりが子宮体部に限定されるⅠ期の子宮体がんが適応となります。


【 治療 】
手術は全身麻酔で行われ1、2時間の手術時間を要します。手術後の経過が順調であれば、入院後1週間から10日ほどで退院できます。

手術後は病状や治療後の経過をみながら数か月に一度の通院をすることになり、その後も定期的な経過観察で再発の有無をチェックします。


【 費用 】
25万円から30万円程度(3割負担の保険適用時)


【 合併症・後遺症 】
単純子宮全摘出術で、尿管や尿道の神経を傷つけることはほとんどありませんが、子宮を全摘出するため妊娠はできなくなります。

卵巣もあわせて摘出した場合は、女性ホルモンの分泌がなくなるため、閉経前の人は卵巣欠落症状という更年期と同じ症状や、骨粗しょう症、脂質異常症などが起こりやすくなります。


準広汎子宮全摘出術

準広汎子宮全摘出術

準広汎子宮全摘出術とは、子宮に加え、周辺部位や膣上部を摘出する手術方法です。がんは、リンパ節に転移しやすいため、がん周辺のリンパ節を取り除く「リンパ節郭清」をあわせて行う場合があります。リンパ節の転移を術前の画像評価で予測することは難しいため、摘出したリンパ節の転移の有無により再発のリスクを評価し、術後の追加治療を決定します。


【 対象 】
主にⅠ期、Ⅱ期の子宮体がんが適応となります。


【 治療 】
手術は全身麻酔で行われ、2時間から4時間の手術時間を要します。手術後の経過が順調であれば、入院後2、3週間ほどで退院できます。

手術後は病状や治療後の経過をみながら1か月から3か月に一度の通院をすることになり、その後も定期的な経過観察で再発の有無をチェックします。


【 費用 】
30万円から35万円程度(3割負担の保険適用時)


【 合併症・後遺症 】
単純子宮全摘出術と大きな違いはありませんが、子宮周囲の組織を切除するため、まれに排尿障害が起こる場合があります。

リンパ節切除を行った場合は、リンパ嚢胞(リンパ管が異常に膨らみ袋状になったもの)や下肢のリンパ浮腫などが起こることがあります。


広汎子宮全摘出術

広汎子宮全摘出術

広汎子宮全摘出術とは、子宮全体だけでなく、子宮を支えている靭帯、膣壁などの周辺組織を広く切除する手術方法です。さらに、骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節(大動脈周囲リンパ節)の切除をあわせて行う場合があります。


【 対象 】
主に、Ⅱ期の子宮体がんが適応となります。


【 治療 】
手術は全身麻酔で行われ、3時間から6時間の手術時間を要します。手術後の経過が順調であれば、入院後3、4週間ほどで退院できます。


【 治療 】
30万円から40万円程度(3割負担の保険適用時)


【 合併症・後遺症 】
骨盤内を広く切除するため、感染症、尿管や膀胱の損傷、排尿障害、排便障害、性交障害などの後遺症が起こる可能性があります。

リンパ節切除を行った場合は、リンパ嚢胞や下肢の浮腫、感染症などが起こることがあります。また、傍大動脈リンパ節の切除を行った場合は、リンパ嚢胞や下肢のリンパ浮腫の他に、腸閉塞が起こりやすいとされています。


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放射線療法

放射線療法

放射線療法とは、高用量X線や高エネルギー線を用いて、がん細胞の増殖を抑え破壊させる「局所療法」です。子宮体がんでは、外部から放射線をあてる「外部照射」を行うことがあります。


【 対象 】
子宮体がんに対しては、放射線治療の効果はあまり期待できないと考えられています

しかし、高齢であったり、重篤な疾患にかかっていたりして、手術療法がとれないときは、放射線治療が対象となります。また、手術が不可能な進行がんや再発した子宮体がんには、がんの進行抑止や症状を緩和することを主な目的とした放射線治療が行われます。他にも、手術後に切除した部分の再発予防のために、放射線治療が行われることがあります。


【 照射期間と回数 】
照射する単位や部位はがんの進行状態によって異なります。ただし、子宮体がんでは放射線治療の標準的な治療指針が確立していないため、明確な基準がないのが現状です。


【 副作用 】
照射される範囲では、がん細胞だけでなく正常な細胞も放射線による影響を受けるため、放射線治療後は様々な副作用が起こる可能性があります。

照射直後から治療中に起こる副作用には、吐き気や嘔吐、下痢、全身倦怠感、貧血、照射部位の皮膚炎や色素沈着などが挙げられます。治療後しばらくしてから起こる晩期の副作用には、直腸炎や小腸障害、放射線膀胱炎などがあります。

また、骨盤リンパ郭清を合わせて行った手術後に、外部照射を行うと副作用が増加するため十分な注意が必要です。


化学療法(抗がん剤治療)

化学療法とは、抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑え破壊させる「全身療法」です。


【 対象 】
子宮体がんの抗がん剤による標準治療法は、十分に確立されていないので化学療法が手術療法よりも優先して検討されることはありません

化学療法が選択されるのは、手術で完全に摘出することができなかった進行がんや、術後の再発した子宮体がんに対してです。他にも、手術後に再発予防のために、化学療法が行われることもあります。


【 副作用 】
化学療法による副作用は薬剤にもよりますが、脱毛や倦怠感、骨髄抑制(血液をつくる働きが低下し白血球や血小板などが減少すること)、吐き気、神経症状などがあります。


主な抗がん剤の種類

子宮体がんの化学療法として、以下の薬剤が良く用いられます。

一般名

略語

商品名

シスプラチン

CDDP

シスプラチン
ランダ
ブリプラチン
シスプラメルク
プラトシン

カルボプラチン

CBDCA

パラプラチン
カルボプラチン

アドリアマイシン
(ドキソルビシン)

ADM
ADR

アドリアシン

パクリタキセル

PTX

タキソール
パクリタキセル

ドセタキセル

DTX
TXT

タキソテール


多剤併用療法

化学療法は、抗がん剤を単独で使うより、数種類の薬剤を組み合わせて行う「多剤併用療法」の方が効果は高いとされています

子宮体がんでは、以下のような多剤併用療法が行われています。

治療法

治療日
投与法

1コースあたりの期間

1コースあたりの費用

AP療法(入院)

アドリアマイシン

1日目
(注射)

3週間

2~3万円

シスプラチン

TC療法(外来可)

パクリタキセル

1日目
(注射)

3週間

3~4万円

カルボプラチン

DP療法(入院)

ドセタキセル

1日目
(注射)

3週間

約3万円

シスプラチン

※費用は3割負担の保険適用時

黄体ホルモン療法

薬

黄体ホルモン療法とは、黄体ホルモン剤を用いて、がん細胞を抑える治療です。子宮内膜増殖症や初期の限られたがん、再発したがんに対して「MPA(ヒスロンH)」という黄体ホルモン製剤を使用することがあります。


【 対象 】
黄体ホルモン剤の効果は、適性を持っている患者に限られています


【 副作用 】
黄体ホルモン療法の特徴は、副作用が軽いことですが、気をつけたいのが血栓症です。脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす場合があるため、肥満の人など血栓症を起こすリスクが高い人は、医師の判断により黄体ホルモン療法は行いません

妊娠への影響は

医師と患者

子宮体がんを発症して手術療法を行うと、基本的に子宮は残さないため、妊娠はできなくなります

妊娠できる望みを残す方法として、ごく早期の子宮体がんで妊娠に適した年齢の人であれば、手術をせず黄体ホルモン療法のみを選択できることがあります。ただし、黄体ホルモン療法の効果が出なかったり、治療中にがんが進行や再発したりしたときは、子宮の全摘出手術に切り替えることになります。妊娠を強く希望する場合は、経験が豊富な医療機関で慎重に治療法を決めることが大切です。


性生活への影響

妊娠を希望しない場合でも、性生活への影響は大きいといえます。

子宮と卵巣を取り除いても性交渉は可能ですが、エストロゲンの低下が性交障害を招き、膣の乾燥や性交痛に悩まされたり、精神的な不安や不満が増したりと、生活の質(QOL)を左右する大きな問題になることがあります。がんの発症以降、QOLをいかに改善するかが大切です。


※本記事の内容は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。